2010年4月22日木曜日

豊かな物語を読むことのできる充実感。

魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
http://maouyusya2828.web.fc2.com/index.html
※小説本編は「目次」のページから。

ペトロニウスさん、izuminoさんなど、あちこちで評判だったので読んでみた。
長い、長いよ、本当にびっくりするぐらいのボリューム。ライトノベル4、5冊分かな? しかし面白いので三日間かけて延々と読むことに。プリントアウトするか、データだけを落としてPDAとかで読んだほうがいいかも。
描写なんてほとんどなく、セリフだけで進むし、登場人物の固有名詞は肩書き「勇者」「魔王」「メイド長」みたいなシナリオっぽい形で進むので最初は面くらうかもしれないけれど、慣れればその世界観に引きずり込まれるだろうなぁ。第1話だけでも読んでください。そうすればぐいぐい引き込まれるはずです。

RPG的中世の世界観から一気に近代まで進化していくようなスピード感。その中で語られる、「あの丘の向こう側へ」の物語。しかも物語はふつうならクライマックスの終わり、そのシーンからスタートするわけで。まずこれに驚いて、次にその物語の展開に驚くことに。

魔王により知識がもたらされる一方、それによって思考、思想が変化、あるいは新たに生まれて、そして様々な形で伝播していく。もう一方の特異点、勇者ももっとも強く影響を受けて変化していく。
いや、それだけではなく魔王や勇者のもとに集った仲間や弟子たちも、その周辺にいるものたちも影響を受けて変化していく。そしてその変化は、彼らだけではなく魔王や勇者自身にも影響を及ぼす。まるで波紋のように広がっていく変化の波。そうして繰り広げられていく、紡がれていく未来への物語...。

馬鈴薯、玉蜀黍、羅針盤、最初はちょっとしたハードウェア的アイテムがもたらされることにより、次の効果がさまざまにあらわれていくのです。一つは生活環境。そして次には政治体制。商業活動。既存宗教とその影響を乗り越えていく思想など、様々なのもが変化し、現れていく様は中世から近世までの流れの縮図みたいなもので、作者はどれだけのバックボーンと構想をもってこの物語にとりかかったんだろうか。

色々語りたいことはたくさんあります。
まず登場人物の一人、「狼と香辛料」的中世~近世世界のような物語世界での経済活動を一人で進化させてしまう青年商人。そしてその青年商人とあの姫とのやり取りが大好きですね。

また登場人物の一人、メイド姉がね、なんの力もない、ただの一人の少女の変化が物語の中での最大の変化なんじゃないかと思います。なんの力も実績もない、ただ魔王と勇者たちに出合っただけの身分卑しい立場に置かれていただけの少女が、専門の教育を受けてるわけでもないただの少女が、周囲からの影響を受けて、自らの立場と世界を見据えていく。
そして物語の中盤、魔女狩りのような弾劾に晒される中、搾り出すような、祈りにも、願いにも、叫びにもにた言葉で、皆に語りだすシーンで思わずじわりときましたよ。そう、何も持たない少女が迷いの中で掴み取った啓蒙思想なわけです。そしてなによりビックリしたのは、その後の変化。もう一人の「・・・」になっていくなんて読みながら物語のダイナミックさに震えました。

ネタバレはしたくないけど、この物語のダイナミズムを語るには若干...書いています。しかしここで書いているのはほんの少しであって、その他にも様々なものがあるのです。

いろいろな意味で面白かった。読了後、あまりのクライマックスからの見事な終わり方に身震いしました。本当にすばらしい物語です。歴史が好きな人、世界を動かす物語が好きな人なら読んでみるのがおすすめかな。
これ、ゼロ年代とかセカイ系とかなら「世界なんてしったことか」で終わってしまうこともできる物語なのにそんなことにはならない。なぜなら、この物語の主要登場人物の誰もかれもが「自分」「他者」「世界」をちゃんと見据えてるんですよね。歴史の転換時期にさまざまな形で流れる犠牲をしぶしぶと認めながらも、なお、(各々の立場、利害によってたって)その影響をできるかぎり少なくとどめよう、良き方向へ向けていこうと足掻いていく物語でもあるわけです。

実際の歴史とは違って、思想も行為もブレはないから反動もない。ちょっと抽象化されたきらいもあるかもしれないけれど、この「あの丘の向こう側」にある「現在」「今」がどうしてあるのかっていうのもつながるようなお話でもある。そして目指すべき場所は確かにあるのだ、ということも。

しかしこんな出会いがネットにあるなんてびっくりしましたよ。

おすすめ作品の紹介でした。いやー、いい物語を読み終わったあとの充実感って本当に格別です。


「その先の物語。」 from 物語三昧~できればより深く物語を楽しむために


「人生を変えることのできる物語/魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」」 form ピアノ・ファィア


2010年4月13日火曜日

最近の購入物

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ああ、面白いよね。今一番安定して読める作者が送り出した作品かな。
これからも続きが出るようなので期待してもいいかもしれません。何より色々サブストーリーが派生できそうな世界になってきました。非オンラインのあの学校を舞台に繰り広げられる物語もありかもしれないね。と思うぐらいに(何しろ、濃厚なオンラインの生活のあと、常時オフ会モードの学校ですよ。何が待ち受けているか色々と想像できません?)。あとでちゃんと書こうかな、と。

ブレイク ブレイド 1巻 (Flex Comix)
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一気に7巻まで読みました。
うーん、そうだなぁ。ちゃんとロボットモノに徹しようとしているのは好感が持てる。人物もちゃんと関係付け、動機付けもうまくいっている。ただもう少し読みやすければ...でもだんだんとこなれてきているし、これからが期待の作品かな。人気があるのも頷ける出来でした。

ナポレオン獅子の時代 13 (コミック)
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star回を重ねるごとにどんどんよくなってきます

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まだまだ続くエジプト遠征。えーっと、あれだ史実だとまだ半分じゃなかったけ? この頃、マッセナはスイス方面で大活躍中のはず。そのエピソードは書かれるんだろうか...。ともかく、まだまだ続くエジプト遠征。ただし破綻の兆しはアチコチで見えてもいたり。

...しかし、この調子はいったいいつになったら冒頭のアウステルリッツ会戦まで到達するのやら...。




2010年4月11日日曜日

サプリ Extra/おかざき真理

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star正直、微妙!

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ついこの間、「サプリ」が完結したと知って一気に最終話まで読んだのでその勢いで購入したというか。

たぶんね、作者も女性だし読者の大半も女性だけど、自分は男性ということもあって視点が微妙に違うんですよね。たぶんこの物語世界に出てくる男性はある意味リアルだなとクスリと笑うけれど佐原はねーな、とか(ある意味理想すぎるというか)。

ワーク・ライフ・バランスとはつまるところ、仕事・家庭・趣味のうちの二択だ。というのがあって、三つ全部は選べないよ。どれか一つが欠落するんだよという話をあるところで読んで非常にストンと落ちて笑ったわけですが、この「サプリ」もそういった話なわけです。
面白いほど「趣味」の話はでてこないですが(ミナミが途中で熱帯魚を買うんですけどね)、「仕事」「家庭(恋愛)」を選択して生き抜いて...そう、この物語に出てくる女性陣は誰もが「生き抜いて」いくことを描いているわけです。心折れて挫折することを描いてもいる。ネタバレ気味ですが、ああいう形で登場人物を退場させたことにはちょっとした衝撃を受けましたね。ああ、そこのシーンは描かないのか、と。

(書けないよね、という正直な気持ちもありますが)

とまれ、ともかくも気持ちのいい、凛とした女性陣の物語です。読んで背筋が伸びるっていうカンジかな。色々な意味で。うん。未読な方はぜひ。オススメです。


つめたく、あまい。/シギサワカヤ

つめたく、あまい。
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白泉社 2010-03-26
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star久々のヒット作

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個人的に注目株の作者が出した短編集。恋愛風味かな。
なんともコメントしづらいんだけど、キャラたちのちょっとズレ?たコミュニケーションっぷりがいい味です。
(とはいえ、物語背景の引き出しがもう少し欲しくなってきたかな、という気が少しばかりありますけど)

読了記録として。

2010年4月10日土曜日

高杉さん家のおべんとう

高杉さん家のおべんとう 1
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star萌え入門?
star偶然買って良かった。
star地に足の付いた内容が好感触

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30過ぎてニートというか、イマイチ将来が不安定な男にいきなり舞い込んだ一本の電話。関係が途絶していた姉の娘、従姉妹の久留里(12歳)を預かってほしい。という電話が舞い込む。そこから始まる物語。

お弁当でつながる「家族」構築の物語といえばいいのかな。妙に家計に細かい久留里がいい味ですw

本屋で見かけたのがかなり前の話だったのですが、良かったです。こういう物語もいいものですね(なんだか最近こういう物語多いなぁと思うことは思うのですが)。





2010年4月9日金曜日

セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史 (ソフトバンク新書)

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starセカイ系まとめ、乙!
starいろいろ気づきを得られる「ポスト・エヴァのオタク史」
star千円以下とは信じられません

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...ま、なんていうかエヴァ以降のドタバタ騒ぎっていうか、ゼロ年代を席巻したセカイ系を集約して知りたいならそれ読んどけ、みたいな? という本でした。ただ、作者のスタンスとか色々身引いて考えておくのが必要かな。オタキング岡田氏に対する意識とかあそこらへんのドタバタ劇も、もう少しニュートラルに見ておく必要があるでしょう(褒められたものではないのは自分も同意するけどね)

セカイ系って結局なんだったの。と言われると、ざっくり自分の判断としては登場人物たちのモノサシがとどく両手両足両目が届く範囲までの距離がすべての認識世界として成立しているもの。世界と自分の価値観が等価であると考えるもの。極めて私小説的なモノ。内向きなもの。というもので、確かにエヴァ以降多かったよね。と思うし、自分も嫌いじゃないんだけど、内向いて閉塞しちゃってばかりもいかんだろ?っていうのが、ゼロ年代を克服しつつある今の流れかなぁ。
ただ、セカイ系と言われると「?」と首をかしげちゃうのが「All You Need Is Kill」(最近ハリウッド映画化も決まったそうで・・・)かなぁ。確かに「閉塞」「繰り返し」を描いていたけど、なんというか書きたい主題はそこにはないというか。

とはいえそういうセカイ系を巡る作品とその周辺をもう一度読み直すにはうってつけの本かなぁ。ただ、何度も何度も「イリヤの空 UFOの夏」が出てくるのにはちょっと閉口気味。確かにキーストーンではあるけど、秋山瑞人がイリヤだけと思われるのはシャクに触る。EGコンバットだろうに。とかリアルで読んでいた世代はマジで思うわけですよ。猫の地球儀もいいですけどね。

過去10年間を遡るにはうってつけの本ではありました。はい。





低率起動中

#色々と忙しくて更新停滞中でした。
書き込みたい話はあるのですけど、Twitterで満足しちゃってるのは多分にあるなぁ。
というわけで、毎度毎度ですが、Twitterを晒しておきます。お気軽にフォローしてください。よほどのスパム系でない限りはこちらもフォローいたします。まぁ、アイマス系、ミリタリ系、SF系、ヨタ話大目でよければ、ですがw
http://twitter.com/BARSERGA
これからぽつりぽつりと読んでいた本の記録とか上げていく...ことが出来ればいいなぁ。

#帝都ぶらり旅?
ちょっと望外の収入が入ったので、数年ぶりに関東方面に遠征しようかと考えている...ところです。
鎌倉方面とか行きたいんだよね。でもGWだとイベントあるけど混みすぎだし、ちょっと連休ずらしていこうかなとか考え中。今週末までには結論出したい。旅費をとるか、PC拡張orPS3かの悩みどころだったりします。...え、しょっぱいって? いや、結構デカイですよね。PS3とかにしてもwww

#キルギスねぇ。
キルギスでの革命騒ぎ、なんだか胡散臭いなぁ。あそこ、アフガニスターンへの航空兵站路のキーポイントであるマナス空港があるんですけど、ロシアからの援助が決まって空路閉鎖とかいう話が出たところにこの始末...アメリカも噛んでそうですし、ロシアの迅速すぎる後継政府承認とか、もう、こんなところでリアルディプロマシーっていうか、冷戦時代を思わせるような綱引きを見る羽目になるとはね。