2009年10月24日土曜日

20091023の記録。

Twitterで、おや?と思ったポストがあったので追っかけみた記録です。

「「国防」を後回しにする鳩山政権 」 from ニューズウィーク
http://newsweekjapan.jp/harris/2009/10/post-31.php

(前略)国内の防衛産業を守るために行われてきたこうした手法は、あまりにコスト高だ。在日米国商工会議所は、「日本のシステムは調達改革を進めた他国の同等のシステムに比べて300~1000%割高になっている」と結論づけた。


最初読んだ段階で「おいおい、新規調達価格でいうなら絶賛大炎上してるプロジェクトばかりの米国にくらべて日本じゃC-Xだけだぞ、おい。あとはいい買い物ばかりなんだけどなぁ」と思っていて、つらつらとtwitterでポストしてたら、突っ込みがあって「日本の防衛費は膨大すぎる」という話にレスをつけてたり。

以後、自分のポストからです。リプライは省略させていただいております。

現在日本の防衛費はGNP0.936%、一般歳出費の9.2%、47741億円だけど、ここから米軍思いやり予算などなど差っぴいて、実質47028億円。ちなみに2003年より微減が続く一方、多額のMD予算もあるので実質の下落率はもうすこしあるか。


装備に見合うだけ、というのが何を指すかはわかりませんが、日本のGNPが大きいので、たとえ1%でも多額。というなら理解できます。2006年段階でドル換算で英仏独がそれぞれ592、530、369億ドル。日本は437億ドルなのです。


※上のポストは適切ではなかったなぁ。というのが正直なところ、核装備をしているような国とそうでない国を単純に防衛費だけで膨大なのかどうなのか、また、日本と同じような状況下におかれているような国がないのだから比べるのは適切とはいえないだろうという気がしていた。んで以下のポスト。

全体的に軍縮傾向・集団安全保障体制が整いつつある欧州諸国と日本の防衛費を比べるのはあまりフェアじゃないし、適切な防衛費(国防に必要な装備と、実際出せる金額に差が生じるの当たり前ですので)ってどうなの、って議論は確かにあまりないなぁ。


※読み返してみると後段はちょっと意味が成してないなぁ。そういう防衛費について適切かどうかって突っ込んだ話は中々ないし、でもそうなると日本の仮想敵はどこにあるのか。とか突っ込んだ話になるし、ドクトリンにまで話がいくから簡単にはいかないんだよなあというぼやきが入ってますね。

で、レスがあって冒頭の記事から「300%~1000%って同等の装備が他の国より高くついてるんですよ」っていうわけで、

(えーっと、確かにライセンス生産とかをしている都合上、同一装備で2倍の金額とか、AH-64Dのケースがあるから一概にはいえないけど、いくらなんでも300%~1000%ってのはいくらなんでもないだろ)

という気もしつつ、そもそも冒頭の記事のリンク先を読まねば始まらないな!と、PDFをクリックしたら160ページの英文レポート Orz... 俺みたいな低学歴にこれは過酷、と涙目で冒頭を見て「あれ?」と首をかしげることに。
ざっと見、ArmyとかDefenseなんて文字が見られない。成田空港のコストが云々とかいう記事があるようで、あれれれ? これってレポートの意図が違うんじゃないのって気がしてきた。

で、別口からアレコレと調べることに。このレポートについて他の記事を探したら「ITの国際競争力向上を"指南"、在日米国商工会議所が白書」っていうわけで、レポート先はACCJ(在日・米国商工会議所)のレポートなわけで、あー、総額として調達コストがアメリカよりもかかるとかそういう話?

もしそうだとすれば、冒頭の記事は(リポート自体、防衛装備品調達コストについて記述されているわけではないのだからして)手ひどいミスリードだと思うなぁ。又冒頭の記事からの引用ですけど、
日本の防衛費はこの10年間、削減が続いているが、いまだに無駄は多い。だとすれば、鳩山政権が装備品調達の改革に関心をもつのは当然だ。防衛システムを複数年分まとめて大量購入する代わりに単年度ごとに購入するといった割高な調達手法を改めたいという意欲をもっているはずだ。


...えええー、だってそれは無駄とかそういうレベルじゃないでしょ(いや、確かにあることはあるが)。あと、ここ最近は複数年一括調達の装備もあるよ! ここは正確に書くと、
「防衛装備品については複数年まとめて購入するなどといった調達方法もとられていはいるがまだ不十分だ」みたいな書き方が妥当じゃない?

大体、wikipediaだけの記事で続きを書いたけど、以下自分のTwitterポスト。

ちなみに、別口からのアプローチをしたい。わかりやすくいうと、F-15の購入金額がwikipediaで120億円から年度にバラつきがあるものの90年代では86億円だという記述がある。これは量産による恩恵だろう。
えーっと、F-15の調達コストが2990万ドル。これ為替レートもあるから今の為替でやると危険だな。90年の為替レートが1ドル150円だそうだから、45億程度。まー、二倍ぐらいだと見積もればいいか。ま、総じてそんなものです。


...ただ触れていなかったけど、F-2はどうなのよ、とかAH-64Dは?とか、89式小銃とM4比べたらそりゃ10倍じゃすまないよね、とかいうのはある。が、すべてではない。

ただ総じて今回のニューズウィークのコラムはいささか恣意的だし、ミスリードを誘っているように思える。
(ニューズウィークのスタンスはどうしても日本の左向き...っていうか、主義主張が偏り気味な傾向があるので自分としてはいささか懐疑的に見てるところもあるのですが、今回はそれにアメリカの息のかかった団体からのレポートということもあるのでバイアスがかかっている傾向があると思われますね)
Webの時代になってリンクが張られているので出典元を探るのは容易いけれど、ちょっと注意は払う必要はありますよね。


無論、日本の防衛装備品が高いのか低いのか、国産が妥当なのかそうでないのか、許容できる金額なのかという考察は外部からも必要でしょう。
ただ、日本の装備調達品が高いのだとすればそれは一重に国内限定生産品が多すぎるからだ、というのもあるし、ライセンス生産という調達方法を選んでいるせいなのもあります。金額だけじゃなくて、どうしてそういう方法を選ばざるをえないのか、とかいうのも考察は必要ですよね。たとえば日本の自衛隊航空機は総じて稼働率が高いといわれてますけど、それはライセンス生産などで企業のバックアップがあるからで、逆にFMS(対外有償軍事援助)で配備されている機体の稼働率は共食い整備で低いとかそういうのがあるわけで。
盛んに最近COTOSと呼ばれる民生品活用がうたわれてますけど、これって民間製品だから導入は安いけど、継続したコストとしてはどうなのよ? っていうのもありますし。

ただ、自分も国産マンセー派ではないですから、小火器や携帯火器に関しては無理して自国生産でなくても...小銃はともかく、少数生産で茶を濁すなら海外から買ったら?っていうシロモノもやっぱりありますよ。最近日本のSOF(特殊部隊)がらみでアレコレとあちこちから小火器を購入しているのが明らかになってますけどね。
ちょっといくらなんでも、海自がH&K HK416を導入してるって話を聞いたときは口がアングリでしたけど。試験運用レベルなのか、SBUに導入されているのか...。
また海自がAAM-4系列の対空ミサイルを捨ててESSMに走ったり、どうも国内で足並みがとれてないっていう側面もあったりするし、中々装備品をどれにするのか、その調達方法に問題がないのかっていうのは、金額面だけは推し量れない側面もあるので難しいですよ。

でも、基本的に防衛装備品がどうのこうのは(重要ではあるものの)枝葉の問題に近くて、本質的に日本のこれからの防衛はどうしたらいいのか...国力が限られる中で、英国のようにバランスのとれた縮小化を図っていく傾向が必要なのかとか考えるのもいいのでしょうけどね。

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