2011年5月12日木曜日

スロウハイツの神様

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
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スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
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若きクリエイターとクリエイターの卵たちが集うスロウハイツでの物語。

ペトロニウスさんのところで取り上げられていたのと、自分も別口から薦められていたこともあり本屋で見かけて購入。

うん、面白かった。上巻で個性豊かな住人たちのエピソードを読みつつ感じた違和感、そして下巻の前半、首をかしげた部分などは最後の章でピースがガチンと音を立ててはまるように解き明かされて、「やられた!」と読後に感じていたり。

持てるもの、持たざるもの。男女間の関係(例えば、スーのような依存関係の高い恋愛とかはまぁ、ありますよねとしかいいようがないし、そのスーに対する環の感情というのは正直男性として考えればいろいろ思うところ大ではある)などが描かれるけれど個人的に思ったのは作品を生み出すものたちのま心の闇だったりその責任だったりを描いたところだったりします。

物語中盤、スロウハイツに住む不似合いな?売れっ子小説家であるチヨダ・コーキと漫画家志望の狩野との会話がね、もう、色々と自分にはフックが掛かるわけですよ。
何かを生み出そうとするものは、心にある様々な闇とどう向き合い、付き合い、ひっぱりだしていくのだろうか。チヨダ・コーキは何もないといいつつも作中ある事件を経緯にして変化している。狩野も同様。しかし、その闇はどこまでいっても個々の持ち物ではあるんですよね。
どう折り合いをつけていくかは個人の問題。だけれど...。

こういう若きクリエイターたちの物語は、作中でも「トキワ荘」が語られているけれど、直近だと「ハチミツとクローバー」かな。全員が一つ屋根の下。というわけでもありませんけど、ここでも才能などについて色々語られていたりしますよね。

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス―ヤングユー)
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物語の終盤、チヨダ・コーキの視点によって鮮やかにこの物語が色彩を帯びていく。与え、与えられる者達の物語は円環を描いて、そして変わっていく。不器用だけれど誰かに何かを伝えて、もたらすことは出来るのだということを描いてもみたり。

無論、この作り手(の卵も含む)達の考えや、行いなどに違和感を持つ人はいるだろうし、それは致し方ないと思うけど、同人でも何でも何か物語を描いたり、作ったりしていた人は少しでも心にフックがかかるんじゃないかな。

たとえどれほど不遇に心を喘いだとしても救いはどこかに必ずあるし、それをもたらすことは出来るのではないかと思うんだよなぁと。不幸を描くのは容易い。希望に満ちた不幸もしかり。だけれど、ほんのわずかな変化がもたらす幸せは中々描きづらいんだよなとか思いつつ。

��こういう作品についてミステリーとか謎解きのような感覚で読むのはいささか不適当だとは思うんですよね。Amazonの感想とかをみてそう思うんですよ)

というわけで読了記録として。


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