Landreaall 13 (13) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) | |
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もう、アチコチの書評系で大絶賛なのも頷けます。それぐらい物語として面白い。
主人公がリドを救うために、リドの故郷ウルファネァに向かった直後のアカデミーを襲う怪物(モンスター)。アカデミーは怪物の網に閉じ込められ、残っていたのは生徒達ばかり。
年少組と負傷した女生徒を網の向こう側に待つ大人たちの下へと送り届けなければならない。
彼らは即席で騎士団を結成。家柄として最上位であり能力もあるティティをトップに、騎士候補生のカイル以下階級制度を無視して能力優先で騎士団を組織する。建物に残った女生徒達も負傷者の看護に当たることになる。そして、囮役の部隊と脱出組に分かれての戦いが始まる・・・。
あちこちで触れられていますけど、この物語世界の舞台であるアトルニア王国は現在国王不在で貴族たちによる集団指導体制。
どうやら身分制度に変化が起こりつつあり、商人たちも貴族や騎士の位を手に入れることができるようになり、それは民衆にまで及び始めているような時代ですね。
貴族の子息向けが通うアカデミーにも、奨学制度で庶民出の生徒が幾らか入ってきているようです。フィルみたいなフリンジと呼ばれる下級階層出はなかなかいないようですけど。
とはいえ、彼らの間には公言はしないものの、身分制度が色濃くあるんですよね。貴族の子息でなければ騎士(候補生)にはなれず、フィルにしても護衛兵志望から抜擢という形をとって従騎士の立場になれる程度。
無論、フィルと末位とはいえ王位継承候補であるティティのような友誼はありますが、ある意味珍しいわけで(なのでティティとフィルは今もわかりやすい貴族息子の下についた庶民という格好を装っている)わけです。
そういうモロモロの社会の縮図もあるアカデミーの生徒達は目の前の危機に一致団結するわけです。そして、様々な形でDXのことを口にするわけです。
王位継承権でもトップに近い位置。火竜の事件を収めた経験も能力もある。フィルなど身分で人を差別する人物でもない。まさくしパーフェクトな役回りですけど、
主人公であるDXとその妹であるイオンは、辺境開拓領出。しかも放棄したとはいえ王位継承権付きで高名な将軍を父に持ち、母もこれまた伝説の傭兵。田舎でしかも領民達はみな傭兵か兵士上がりなので非常に立場に対して自由でいられた。彼らは「坊ちゃん」とDXを慕っていた。
その立ち振る舞いはアカデミーにきても変わることなく、拗ねていたフィルの心を解きほぐし夢を見ることができるまでになった。まさしく周囲が語るように立場は貴族でも、行動原理は傭兵のように自由。
ただ、貴族、王族として振舞うことがどのようなことなのかを知っているDXはあれやこれやと理由をつけてその面倒な話から逃げ回っていたのですが、どうしてかをこのエピソードでイオンは思い知るわけです。
��Xがリドへ発した言葉の意味を思い知って彼の故郷へ向かったように、イオンは自らの言葉によって「命も惜しくない」と戦う騎士候補生たちの姿を見て、自分の発言や行為がどれだけ周囲に影響を及ぼすか恐れを抱くわけです。そして兄であるDXと、今、指揮を執るティティの苦悩を知るわけです。
いや、ほんと面白いわけですよ。
大体、メインのストーリーが動き出している一報、ウルファネァの一件に片を付けるため、学長と寮長のR.ケリーがアレコレと動いていた(結果は、前の巻で述べられるとおりというのが上手い)というサイドストーリーもあるわけです。
レイ・サークを経由して届けられたあの書類が、ウルファネァでのDXの願いをすべて叶えさせる魔法の杖となるわけですから...。なんともはや、上手いつくりだとしかいいようがありません。
物語は色々な事情があって、急速に畳むのですが致し方ない。本当は作者も続けたかったのでしょうが、連載自体が続かないとなぁ...。なぁに、またの機会があるんじゃないかと。
��Xがいないとつまらないと思う人もいるでしょうし、それは否定できないもんですからね。
今しばらくはDXを中心とした物語を堪能することにしましょう。
イオンとメイアンディアの城でのエピソードの全容、それとメイアンディアとの恋愛は始まるのか。大体、物語の発端である彼の父親に纏わる事件の全貌は? 細かい話だけど、"レッセ・フェール"は元に戻るんだろうか、とか。物語はまだまだ続くわけですから・・・。