世界の特殊部隊作戦史1970-2011 | |
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特殊部隊の作戦をベトナム戦争時の捕虜収容所強襲作戦からビン・ラディン殺害に至った「Operation Neptune Spear(海神の槍作戦)」まで丁寧に追いかけています。通史として読むにはうってつけですね。
第二次世界大戦で一部活躍したSASなどの流れが一度途絶したあと、再度よみがえり、英国ではSAS/SBS(オーストラリア、ニュージランドもSASを設立)、アメリカでは陸軍のグリーンベレーと海軍中心の敵前強襲上陸作戦用のUDT(水中破壊チーム)などを中核としたSeALs、そしてベトナム戦後SASからの影響を色濃く受けたデルタチームが作られ、イスラエルでもSASの影響を受けたサイェレット・マトカルが誕生。
1970年代のテロの時代から特殊部隊の重要性が高く評価されることになるのでした、と、大体このあたりから1990年代までは「パイナップルARMY」とか「マスター・キートン」読んでいると大体理解されるのでしょうけれど、意外や意外、湾岸戦争以後、「ブラックホークダウン」で描かれたモガディシの戦いもそうですが、9.11からの特殊部隊の流れが今いちわかりづらいということもありますね。そういったことを踏まえるとこの本を読むと、それから以後、特殊部隊がどんな戦いに身を置いてきたか、概略が見えてきます。
個々の細かいエピソードなどはそのあとで追いかけるのがいいでしょう。時々出てくる誤植は生ぬるくスルーしましょう汗;;;
しかしまぁ、いろいろ思うこと大なんですが箇条書きにすると、
「アメリカ軍、湾岸戦争このかた英国のSAS/SBSを頼りにしすぎだろう?」
ほとんど共同作戦状態。TF(タスクフォース)も頻繁に作られる。混合チームも。わざわざアメリカの特殊部隊司令官が英国までいって、今後も参加を要請するとか無茶ブリしすぎです。
あと、オーストラリアSASは口が軽いw
「イラク戦争直後、特殊部隊TF21がバグダット周辺でああ無茶しなけりゃ、もう少し民衆掌握うまくいったんじゃね」
やっぱりねぇ。というのが正直な感想。コラテラルダメージが続くと、そりゃ人心離れるだろう。
「やっぱり空軍の支援はアテにならんのか汗;;;」
みんなが思うほど、プレデター無双とか、F/A-18マンセーとかではなかった模様。
「あまり内情書かれていないポーランドのGROM、かわいそうだなぁ」
これは正直かわいそう。あとカナダの特殊部隊はJTF-2でしたっけ。
最近各国間の特殊部隊による合同チームが組まれることが多々あるんですが、言語問題が大変なようで、ドイツのGSG-9と組んだときは大変だったとかいうエピソードがどこかで読んだ気が...。
さて、ちょっとしたことを書くと、特殊部隊はよく訓練された兵士と恵まれた装備により通常兵士より高い戦闘能力を発揮します。
ただし、それが存分に生かされるのは作戦突入に入るまで十全の準備を施し、訓練を重ねている場合のみで、なんでもかんでも特殊部隊を送り込めば成功するわけではないのです。当然のごとくですが。スーパーマンがいるわけでもなく、事前の訓練のみが可能にすることもある。
なので、彼らをして突発的な事態となると、終始泥縄感漂う展開が待ち受けることになる。モガディシの戦いしかり、カライジャンギの戦いしかり(この戦い、どこか映像化しないでしょうかね)。
為政者が、大規模通常兵力を運用して死傷者を出した場合の国内問題から、特殊部隊の秘匿性に注目してあちこちで特殊部隊を投入するようになった現在ではいましばらく特殊部隊の春は続きそうではありますが、あまり便利につかうのもどうかなぁとは思いますね。
そんな感じで。通史としておすすめですね。はい。
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