2013年4月17日水曜日

クルマはかくして作られる4 / 福野 礼一郎

『日本のモノづくり』とは、結局のところ細部に宿るものなのか。

クルマというマスプロダクションで作られるガジェット、モノ。それは様々な技術の集合体でもあります。(ほぼ)国内産業で車を一から作れることのできる国は数少なく、いまや日本とドイツぐらい。アメリカも主要部品はなんとか作っていますが、コンポーネントは日本や海外の輸入品もある。

とはいえ、ガジェットを作る基盤は、いつかコモディティ(均質化)して、日本ができたことは他の国でも出来るようになり、そして人件費という面でデメリットが生じれば日本ではできなくなります。まぁ、これを産業技術の配分と捉えてもいいのですけれど。

で、クルマのほうに戻ります。クルマは大量生産することによって初めて量産効果などが生じますが、世界においても数少ない単独資本・単独メーカー(厳密にいうとダイハツがあるからちと違いますが)のトヨタが何をトチくるった(失礼)のか、世界に500台限定の車を売り出すことを決めました。それがレクサス・LFA。このご時世、珍しいスーパーカーです。

大体、大手車メーカーだったら、限定生産にしても数は少ないわけで、まともに考えれば出来あいの既存フレームだったり、エンジンだったり、パーツを流用することを考えるはずです。
ところが、時々何をわかっているのかわかっていないのか、無茶をやりだすトヨタはこの車を作るにあたって、ネジ一本から設計、作成し、作成ラインを組み立てるわけです。無論、500台作ってはい終わりでありませんから、今後のフォロー・サポートも必要になりますよる。クルマ一台売り出すとは結構大変なことなのです。

で、そういったもろもろ大変なことを、主に作る側から追いかけるとしたらどういうことになるのだろう。と、感性やありきたりの表現を良しとせず、技術のなんたるかを踏まえてからすごさ・問題を語る福野 礼一郎氏が、作成ラインの組み立て風景から写真取材するわけです。構成している部品を納めている中小企業に至るまで。

読むと、色々な面でため息が出ます。その紙面にも。
無論企業秘密や時には国防(!)問題にまで発展するので撮れないのも大有りなんですが、作成ラインの工程を一から説明。途中の部品までを写真に収めているので、そのキレイさに嘆息します。本当に、神は細部に宿り、そして、それを作る人たちも紹介されるわけです。

内装を作っている企業で、LFA全部を担当したのは実は女性社員(パート?)だったりするのですが、この本では丁寧に、各企業代表・担当者の名前を実名で記載。しかも記事最後には、500台のLFAとは別にトヨタがキープしている車検取得済みの開発車両と写真に納まります。
これはもう取り上げられた企業、取り上げられた人々にとっては家宝ものですよ。
自らの技術を切り取り、そしてどういうものかを説明されているわけです。

そして、その技術にもため息が出ます。
無論、日本国内ですべてをまかなっているわけではありません。一部は欧州だったりアメリカの企業から部品提供を受けたりして作っているのですが、ワンオフものではなく、量産品として、望みうる最高の技術を投入できる。
この国は、こういうことが出来るのだ。と改めて実感できるわけです。
そして、クルマというマテリアルは膨大なパーツと産業から成り立っていることもまたわかります。ほんと、産業ってのは奥が深い。

...正直レクサスLFAに対する感想としては、正直、500台というスケールのわりには値段は高いし(読めばそれも納得できますが)、スーパーカーとしてのパッケージングはさすがだけど、エポック・メイキング足りえないなぁ。という印象でしたが、そこに投入された日本、そして世界の技術は紛れもなく一級品で、それを作っているのは、そこいらの企業にいるごくごく普通のわれわれの誰かである。ということなのです。

そのすごさを改めて実感できる、いい本でした。
興味のある方は是非。



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