さて、見てきました。「ヒトラー最後の12日間」。まんまストーリーはタイトル読んで字のごとく。ヨーロッパでのWW2末期、ベルリンの戦い(ベルリン包囲戦)でのヒトラーの死までを描いているのですが、いやぁ、長かった。2時間30分だもの!
「そりゃすごい。でもあれだよね、正直見やすい映画じゃないよね」
そうだね。ベルリンの戦いにいたるまでどういう状況かを説明してないんだ。まぁ、向こうにしてみれば一般常識だろ?ってのがあるんだけどね。せめて見るなら、 こことか、 ここを見て調べておかないと。かくいう自分もベルリンの戦いは小林源文先生の作品とか、WW2の戦史で通り一遍を読んだだけだから、誰が誰だかわからなくて最初呆然としてました。邦訳に誰がだれかクレジットを入れてほしかった・・・エンドクレジットで教えられても、あの太っちょがゲーリンクかよ!?とか(いや、言われてみればその通りなのだが)さっぱりで・・・。
「話としては陰鬱だった?」
愉快なものにはなりそうもないよね。まぁ、手当たり次第に民間人を処刑するSS(武装親衛隊)の移動軍事法廷とか、オーデル河渡られて目と鼻の先までソ連軍が来ているにもかかわらず市民を避難させなかったせいで、民間人に多数の犠牲者を出しているとか、もう陰鬱となるような物語ばかり。で、その一方では隔絶した世界でもある地下防空壕での物語が語られる、というわけで面白かったよ、色々な意味で。
ヒトラーとエヴァ・ブラウンの自殺のあと、残された将軍たちが一斉にタバコを吸い始めたり・・・結構びっくりしたのは、物語の視点である女性秘書ら女性陣が結構タバコ吸うあたり。最初は部屋で、とか攻勢が一休みしたあたり外に出て、だったのが仕舞には発電室で・・・って高校生か、キミたちはとか(禁煙菜食主義者のヒトラーのせいか地下防空壕は基本的には禁煙でした)。
あと、あまりイメージが沸いてなかったエヴァ・ブラウンとかね。面白かった。
「と、いうと?」
『総統』ではないアドルフ・ヒトラーという個人を彼女は愛していたんだ。それをちゃんと映画では描いている。それまで色々な本を読んで彼女のことを知っていたが今いちイメージが固まっていなかったけれどね、今回の映画で固まった。あと、シュペーア。建設家にして軍需大臣として辣腕を振るった彼は理性的な紳士の役どころだよね。なんだかネットで調べたら、最近そうではなくてやっぱりユダヤ人ホロコーストに関与してたんじゃないかって言われているらしいけれど。
あと、かなりの人々が極々最近まで存命していたのは知らなかった。ギュンシュってヒトラーの運転手で、彼がヒトラー夫婦の死体を荼毘というか火葬にしてしまうのだけれど、2003年まで存命だとは知らなかった。あと、地下壕から脱出する部隊を率いてたモーンケ将軍も2001年までとはね。歴史はすぐそばにあるんだ。
それから・・・。
「それから?」
まぁ、なんだか映画を見ているとドイツ人のアンビバレンツな戦争の直視を見ているようでちょっと気になったのさ。ドイツの歴史を見たり戦後補償の云々の話を聞かさせる度に感じる違和感があるんだ。
ドイツにとって、アドルフ・ヒトラーは災厄だった。ユダヤ人のホロコーストもあった。それはナチスがしでかしたこと。という認識だけれどね。
「ちがうのかい?」
ナチスはその発生当初から独裁ではなかったんだ。詳しくは、 ここを読んでほしいけれど、合法的に選挙と連立で政権を取得した。無論その影にはドイツ人のWW1での鬱積として思いがあったせいでもある。ワイマール政権下(ヴェルサイユ条約下)でのドイツ人たちの閉塞感がヒトラーという偶像を選んだ。つまり、ある日突然ナチスが発生したわけでもないし、クーデターで政権を奪取したわけでもない。極めて合法的な政権であり、その点ではドイツ人全員が等しく罪の意識を感じているのだろうか。という疑問がある。何かというと「ナチスが・・・」というが、おいおいナチスに公的な権力を与える一因はどこにあるんだろうか、とね。
「ああ、つまり悪いのはナチスでありドイツ人でありませんよ、って意見には完全には首肯できないと?」
そうなのだろうか、そうではないかもしれないしね。ただ釈然としない気持ちがあるのは事実だよ。
WW2の発生理由にはWW1のヴェルサイユ条約が遠因ではあった。ドイツ人の根底に流れる頑固一徹さも原因だったと思う(げんにドイツ人はヒトラーを最後の最後まで見捨ててはいない)。大体ラインラント進駐の時に英仏が強権に出ていればヨーロッパは違う姿だったかもしれない、もしくはもっと違う有様だったかもね。
そして、ベルリンの戦いの後に出来たことを考えると(省略するけれど)、歴史のどうしようもなさを感じてしまう。
そんなことで8/15にこれを見るのは中々歴史の皮肉とかを感じさせたなぁ。いい作品でしたよ。
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