2008年12月7日日曜日

良き物語のための条件、世界という名の舞台

「テメレア戦記」本当に面白かったです。

テメレア戦記〈1〉気高き王家の翼テメレア戦記〈1〉気高き王家の翼
Naomi Novik 那波 かおり

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本文のほうもちょっと追加してます。もし興味のある方は下にあるエントリを読んでいただける嬉しいかも。

で、こういう面白い本を読み終わってしまうと、つらつらと考えちゃうんですよね。

「日本の元寇を"神の風"(訳文から察するところ、つまりは『神風』だと言いたいんだと思う)で打ち払ったという"ライデン(雷電)"がいたわけか。
 んー、どうなんだろう。オリエンタル種が中国原産だとすれば、多分邪馬台国はムリにしても平安時代あたりで中国から竜種を貰ったんだろうなぁ。遣唐使との絡みがあったりして。以後、日本刀よろしく日本で品種改良が進んで行ったとすれば面白い。
 中国では制空権を得ていたのであまり竜に特殊戦闘能力(火吹きとか毒)を持たせることはなかったという設定があるけど、そのかわり天変地異的なスパロボで言うところの広域MAP兵器を持っているのがテレメアのアレなんだろう。オリエンタル種の中でも日本原産の竜は戦闘能力が高いという設定だから、多分チート的能力の竜がいるかもしれない。

 ふーむ。と、なると天皇家直属の竜がいて、その後守護職級の大名などに竜が与えられたかもしれないぞ? まぁ、18世紀のナポレオン戦争時代でも英国には竜が少ないという設定もあるし、ローマ時代は小型竜が主体だったという記述もあるからパーンの竜騎士みたいな、竜+人一人、みたいな乗り手だったんだろうし。そう考えると日本も小型竜かもしれないなぁ。あまり大型竜は必要とされない(その攻撃能力からしても、地形的な問題からしても)かも。

 あはは、想像が広がるぞ。

 おそらく元寇の戦いは鎌倉幕府直轄の竜がいたとしたら? 元寇の知らせを受けて、急遽大宰府から飛び立ったとか・・・。向うはドラゴンはいないかもしれないなぁ。で、その後戦乱の時代を迎えて、各地の有力な戦国大名がそれぞれ竜を一匹?か二匹抱えていたらとしたら。うーん、戦力バランスが崩れるかなぁ。ほんと、F.S.S.のMH見たいなもんかなー。
 最後の戦いは竜と竜の一騎打ち、みたいな?

 織田家にはどんな竜がいるだろう。そもそも信長とウマがあうのだろうか。川中島の合戦では上杉謙信と武田信玄双方が乗る竜が戦うとか? まぁ大名が乗り手になるのはないだろか。
 あと伊達政宗が虎哉和尚ではなく、エンシェント・ドラゴンみたいな長老格竜に仕込まれたとしたら中々面白くないか? で、政宗を担い手と選んだ小さい竜もその脇にいるとか。
 島津には恐ろしく戦闘能力に特化した竜がいるとか。

 その後、徳川家による治世が始まるから竜は基本的に徳川御三家、あるいは外様でも規模が大きい、仙台、加賀や長州、薩摩などが抱えるだけになるとか...うーむ、竜が肉食だけど魚も食べるから食事はどうなんだろう。

 うはー、想像が色々ひろがるぞ」

とか、やくたいもない想像を考えてもみましたが、良き物語の条件は読み手がその物語世界に没入できることも条件の一つだと自分は思います。ま、ある種の中二病的装いではあると思いますが。
 テレメア戦記は極々最近、そんな創造を広げてくれた作品でした。

 読み手が物語の文中にちりばめられた世界を語る言葉を元に、脳内に一つの世界を作り上げる。イメージがどんどん広がり、その中で物語の登場人物が、いやそれ以外の人物が動き出す。
それが物語の醍醐味だと自分は思います。

以前も取り上げたランドリオールも、そういう作品の一つです。おそらく作者のおがきちかさんの頭の中では、登場人物がどこでどうしてどうなっていくのか。というポイントと世界が(それほどかっちりという姿ではなくとも)あるのだというのが読んでいてわかります。

Landreaall 13 (13) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)Landreaall 13 (13) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
おがき ちか

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あちこちで声が上がる傑作の声は読めばわかると思います。主人公不在というシチュエーションで逆に光り輝きだす登場人物たち。それが可能になるのも、それまで物語で語られた登場人物たちの断片が蓄積となり、背後には作者のそれぞれの人物に対する思いいれが可能にするわけです。作者の頭の中には登場人物一人一人のいままでとこれからがちゃんとある。だからこそ可能な物語なんですよね。

このアカデミー騎士団編でしか出てこないキャラも多いでしょうが、その一人一人にいたるまで、今後どんな形でアカデミーで、国に携わっていくのか。それに思いを馳せれることの出来る一級品の物語なわけです。無論まだ革命の真実も描かれていない。(読み返して気がつきましたけど、戦乱の余波のせいか騎士団がまだ十分ではないようですね)

だからこそか、その世界について色々と思いを馳せることが出来る。くしくもアカデミー騎士団編でわかったように、DXたちのいる王国は革命にも似た騒動を経ているだろう、とかその未来に思いを馳せることが出来るのだと思います。

良き物語は読み手にもその世界の住人であるかのように想像を膨らませることができるんだろうな、と。

 ここからは私見で自分の知識や思い出だけで語っていますが、よりとそれまで物語の年表とか世界感を構築してから物語を作ったものとして代表的なのが指輪物語だと思います。 ちがったかな?

 逆に少ない設定から世界感を逆構築したケースで有名というか筆頭といえばガンダムですよね。「ガンダム・センチュリー」が今に至るもガンダム世界の古典的教書であるにはそれだけの理由があるわけで。

 日本では90年代冒頭からこの手の物語の舞台となる設定がいやに緻密になり、F.S.S.みたいな副読本がないと辛いぞ、というのも出てきました(無くてもいけますけど、面白みがないといえば無いのですよね)。

ファイブスター物語 (1) (ニュータイプ100%コミックス)ファイブスター物語 (1) (ニュータイプ100%コミックス)
永野 護

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F.S.S.DESIGNS 1 EASTER;A.K.D.F.S.S.DESIGNS 1 EASTER;A.K.D.
永野 護

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今だとTYPE-MOON関係の作品は背景に奈須きのこの世界感があってこそ、というのがわかるようになってきましたね。空の境界、月姫、そしてFateは同一世界感にあるのがわかりますしね。

こういう物語の世界感を統一して利用しようとする流れもやはりあるし、そういうのがシェアードワールドものになるのでしょう。D&Dなどゲームをベースにしたものが多いのかも。グループSNEのフォーセリアシリーズは、ソード・ワールド、ロードス島、クリスタニアがそれに入りますね。
あとは蓬莱学園シリーズ、七都市物語ですか。
自分が最近読んでいるシリーズでは、本家とはまったく別ルートになりつつあるが、それはそれで面白い榊ガンパレと呼ばれる榊 涼介氏のガンパレードシリーズですね。

ガンパレード・マーチ 九州奪還〈4〉 (電撃文庫)ガンパレード・マーチ 九州奪還〈4〉 (電撃文庫)
榊 涼介

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ゲームとしても複合世界感な設定なのですけど、この小説はもはやそういうくびきを突破しそうな勢いで突き進んでいます。

テメレア戦記もそうですが、榊ガンパレも我々とはどこか違った世界なんですよね。だからこそ想像の余地がもっと広がるのかもしれません。架空戦記的テイストが色濃いせいでしょうか。

では架空戦記はどうなのか...。実は2chの軍事板スレでアレコレと語られていたことのある作品が自分にとっては記憶が鮮明です。

征途〈上〉衰亡の国 (徳間文庫)征途〈上〉衰亡の国 (徳間文庫)
佐藤 大輔

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ご存知佐藤大輔ただひとつの完結作品。太平洋戦争のレイテ沖海戦で日本が勝ってしまったがために北海道で分断された日本。
物語は色々な事情からかなり端折った説明が多いんですよね。だからこそ読み手たちは色々と想像を膨らませる余地があるのだと思います。「記念艦やまと」で探すと色々とでてくるかも。
あのスレでは統一戦争により日本が再統一果たしたあと、超大型護衛艦「やまと」が東京お台場の船の科学館に展示されるという設定からアレコレと妄想がスタートするんですよね。


というわけで良き物語は、読み手がその世界についてアレコレ想像できるだけの余地があるものだと思います。願わくば今後もそういう物語を読んでいきたいものです。

ちょっと別件で書いていた話なのですが、こちらのほうがまとまってしまったので先に書いてみました。

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