ファンタジウム 1 (1) (モーニングKC) | |
杉本 亜未 講談社 2007-06-22 売り上げランキング : おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
しまった。連載がこれだけ続いているのだからもうコミック化になっていてもおかしくないはずだったのに、ここのところアンテナ感度が落ちてて本屋に行くまですっかり失念していました。
いい作品です。マジックが題材の物語ですが、それだけではない深みがある。
マジシャンだった祖父がいた北條英明は、サラリーマンとして精力的に働いているが目的を見失いかけていた。ある日、祖父が舞台に上がっていたキャバレー近くに行く用件があり、そこで巧みなマジックのスキルをもつ少年、長見良と出会う。
良が見せる観る者を魅了する巧みなマジックの数々。祖父から手ほどきを受けたことを知り、彼に興味をもつ北條だったが、良にはある問題もあることを知る・・・。
難読症(作中の表現で実際は違うことが明記されています)で、文字が読めない、書けないというハンディキャップをもっており、日常生活はなんとか行えるが障害が多いのもまた事実。人は時々、外見に現れるものでも差別がありますが、外見に出ないものが一番話が難しい。
しかし良はそういうこともありのまま受け入れて、人々をマジックで驚かせていく・・・。
良く出来た物語は、登場人物たちの断片を切り取ってみせます。
この物語に出てくる人々も皆その断片をみせてくれる。外面と本心のギャップだったり、思わぬ姿だったり、あるいは事実とは違う形かもしれない。そういう物語をちゃんと描いている作品なので自分は好きだったりします。
ベタではないしっとりくる人情もの。という形だと思ってくれれば。
マジックの薀蓄はちょっと出てきますけど、作中でのマジックもアメリカのショービズで見せるようなイリージュンっぽいではなくて、テーブルの前まで言って客に見せるスタイルだったりジャグリングだったりするスタイルを見せてくれます。ちょっとだけしか作中で出てくるマジシャンの名前とかスキルの名前がわからないので、ある意味そちらの楽しみもありますよ。
今ですと連載されている「モーニングツー」が無料公開になっていますので、そちらでお試しを。
...自分語りをさせてもらえれば、この手のマジックについて自分も興味があってちらちらと本を読んでいました。まぁ、パーム(手の平にコインやカードを隠すテクニック)で挫折した口ではありましたが(苦笑)。
東京での職場の寮にいた同期が非常にマジックが上手くて、ショーもやるぐらいのスキルの持ち主で、パーム方法とかいろいろ教えてもらっていたなぁ。元気でやっているでしょうか。連絡が取れないのですが、「マジックで一本立ちしたいんだけどね」と語っていた姿を思い出すなぁ。