2010年12月24日金曜日

誰も未来(さき)のことなどわからないから。

「新防衛大綱とAir-Sea Battle [Air-Sea Battle Concept]」 from 東京の郊外より
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19


「新防衛大綱 機動性ある自衛隊へ転換急げ(12月19日付・読売社説)」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101218-OYT1T00783.htm


最近、色々と問題になっている自衛隊の「動的防衛力」に対する私見です。
読売新聞はやけに防衛大綱での陸自削減に興味津々なんですね。なんでだろ。

航空自衛隊のF-X問題もそうですが、どうしてこう揉めちゃうのか。というと、日本という国で防衛問題とかそういう戦略問題について公に協議、検討するような部署もなければ風土もないというのが大きいような気もしますが。(無論、手弁当で次世代の防衛に携わっている人も多い...ようなのですが)

最近の対中国問題から振って沸いたようなか見える「動的防衛力」構想ですが、その前から話題にもなっていましたし、アメリカ軍のAir-Sea Battle Comceptも形が見えつつあります。こういう流れがもう少し、はっきりと見えてこえばいいのにねーとは思いますが、いかんせんこの国でそういう話しを考えると、床屋談義とかあるいは国士様が沸いてくるのが定番なのかもしれません。
(ま、こうして書いている自分も似たようなものなのですが)

#自衛隊では戦略的な判断はできないのか。
もちもんそんなことはないでしょう。ただ、どこまで言っても日本にある組織である以上、ドラスティックな改革、大鉈を振るうのは中々難しいと思います。今回の防衛大綱は結構踏み込んでますが、これが実現の目があるかとはまた違う問題ですし。
基本的に彼ら、自衛隊制服組は政治の方針に基づき必要な防衛力構想を練るのが立場なので、大掛かりな組織再編は難しいかろうとは思います。
ついでにいうと、自分は航空自衛隊のトップだった人があの程度の歴史認識、政治認識でトップに上り詰めたことに軽い衝撃を受けています。あれがポーズじゃなかったとしたら、余計に怖い(ポーズでもどうかと思いますが...まだ、救いがありますが)。

まぁ、そんなわけで例えば航空自衛隊をウォッチしている人ならいい話題のネタになるF-X問題にしても、どういう航空防衛力構想(つまり対仮想敵国に対してどこから何をどれだけ防衛するのか)というデザインがなければ、機材が決まりませんし、外部からの論評もできないでしょう。いままで見たいに成金趣味かエルシャダイのように、「一番いい装備(戦闘機)で頼む」とか言えるような時代じゃないですしね。

例えばこれがアメリカだとシンクタンクとか、政府筋のレポートが出てその中身とかシグナルとかを協議できるでしょう。中国だって中国海軍のあの人のように何かことあるたびに「空母が必要」とか唱える人がいるから、まぁ一応考えが見えるわけですが、自衛隊の場合...なんか日本財団あたりが色々とやっているようで、たまに論文などを見てみると興味深い内容もあったりするのですが...ちょっと見えてこないところも多いんですよね。

まぁ、自衛隊内部で色々と考えてはいるでしょうし、その流れの中での大綱でもあるのですが、もう少しその方針決定にいたるまでを可視化してみるのもいいかもしれません。防衛白書もいいかんげんダイジェストという形ではなくPDFで全面開示でもいいと思いますが。写真の著作権が問題なら、写真抜いてくれてもいいんですけどね。

#アメリカのAir-Sea BattleConceptと日本の立場
これは正直...。キモは、戦力投射能力がより遠大になったため、海・空の攻撃を見直してみようというのが流れにあるし、その一方では、長引く戦費増加で従来の重厚長大な戦力投射は難しいと考えてみるのもあるかな、とは思います。
というか、対中国との戦闘において、空母戦力がおそらく制空権を保持できないかぎり、グァム以西、へたするとハワイ以西にまで引きこもることになるかもしれない。ということは自衛隊にとっても悩ましいです。
空母がHVUになりすぎておちおち戦域に投入できないなんて、なにその艦隊保全主義じみた考え方?という気もしないでもないです。

で、米軍と違うのは自衛隊にとって護らねばならない島嶼は基本的には防衛するのではなく奪還せざるを得ないのが立場です。
無数にある島嶼すべてに陸上兵力をおくわけにはいきませんからね。
ではどうやって奪還するか。まともに考えるなら、潜水艦を経由してSOFを投入。状況を確認後、時間が許すのであれば潜水艦、水上艦艇、航空機で補給路を遮断して日干し。政治的、軍事的に許さないのであれば強襲。制空権を握って、連隊規模での上陸戦...あまりいい状況ではありませんが。

無論、前提条件はいろいろ変化します。仮想敵がどれだけの規模を上陸させてくるか。見積もりが曖昧になります。例えば、ちょっと前まで軍事系blogなどで盛り上がっていた大規模着上陸の可能性とかを考慮するべきでしょうか。
軍事的な対応としては良く言われる『意思ではなく能力に対抗すべき』という観点に立てば大規模着上陸にも配慮は必要でしょうが、正直そこまで考えたら防衛費がいくらあっても足りないわけで、軍事的能力でのみ対抗するのはいささか荷が重過ぎるでしょう。
いや、それこそ現在、日本がそこまで軍事的圧力下に晒されているという判断できるかどうかもありますし...冷戦時代の自衛隊ですら独力で北海道からソ連軍をたたき出すという幻想を持ちえていたわけではないので、ここでこそ、最低上陸見積兵力と対応可能兵力見積が必要になってくるのですが、ここでもこの話しが出来る余地、ソースが足りないかなぁ。
 よく言われていた「基盤的防衛力」が「動的防衛力」に変わったわけですが、対処兵力見積もりがわからない状態で、どう判断するか厳しいところがありますよね。それで戦車400両がまかりならんとかいえないわけで...。

では、実際問題陸上自衛隊を削減しようというのが流れなら致し方ありませんが、ならばもっと機動性と戦力投射能力を向上させよう。というのが自分の意見ではあります。
戦車が少なくなるというのであれば致し方ありません。正直600両でも少ないとは思いますが、400両でなんとかすべき手を考えるしかないでしょう。なら、機動力向上を掲げるしかないかな、と。どれだけ早く陸上兵力を糾合して戦地に送り込めるかが肝要でしょう。
分散配置をするか、北海道と本州にもう一箇所に集中させて、戦略機動で送り込むか。
正直10両、20両と分散配置するのなら、集中運用したほうがいいんじゃない?という立場ではありますけどね...。
なんだか気分はソ連軍に対抗して攻勢防御をとろうとするドイツ軍の気分ですが、致し方ありません。戦車の代替手段、というか戦車を陸上移動トーチカ代わりにするってのもアレですが。
砲兵のほうも、従来のFH70が減少対象でしょう。戦場の神でもある火砲なんて削減するもんじゃないとは思いますが...射程30km程度なら、島嶼奪還に使用できるのかといわれると首を傾げざるをえない面もあります。自走式ではないので機動性も疑問符がつく。ここはMLRSにATACMSを導入させていく方針もありでしょう。ま、ここらへんは本職の方など頭を悩ませているところでしょうが...。

ただ、正直アメリカのAir-Sea Battleコンセプトが対中国の指揮・兵站路の断絶を求めているのですが、どうかなー。仮想敵と日本の距離ってわりと近いんですよね。時空間の奥行きが足りないので、弾道ミサイルとか色々考えると...ちょっと日本にとって丸のみできるドクトリンなんだろうかっていう気がします。素人考えですが。
あと、アメリカ軍がそうしているからといって右倣えでどこまで海空重視でいくのか。海自はアメリカ海軍べったりなところがあるから(インターオベラビリティ重視という点もあるのですが)、多分乗る気でしょう。航空自衛隊もアメリカ空軍日本支社みたいな側面もあるから、まぁ、わからんでもない。
一番割りくったのが、わりと独自色の強い陸自っていうのがねぇ...。
まぁ、そんなこんなで先行き不透明な自衛隊の未来はどうなるのでしょうか...。

(しかし潜水艦も当初言われた20隻体制から、22隻体制に格上げですよ。アメリカ海軍とか見習って、一隻ぐらいはSOF乗り組み用の設備を増設してみてもいいかもしれないなぁ。とか色々思うのですが...周辺各国はかなり嫌がるとは思います...いや、防衛目的ですよニヤリ。あと、高速輸送船ですね。TSLとかまだ埃かぶってるならリースしちゃえよ。とか思うのですが)




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