前から読んでいた本を読み終わったので、紹介ということで改めて。
早川書房 (2002/07/25)
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コンピュータに詳しい人なら知っているだろう、PDAのParm Pilot(パーム)やPowerMacDUO(ノートPCをデスクトップ化できるイカしたデザインでした)などのインダストリアルデザインを手がけているのがデザイン・ファームIDEO(アイデアのギリシャ語読み)。
もっとも、単なるプロダクトのみのデザインではなくて、サービスの拡大などを行う。というのがここのウリなのだそうですが。
この会社の内部で日夜行われているメソッドを様々な観点から語っているのがこの本で、冒頭からあるTV番組の企画として「1週間でスーパーのショッピング・カートを改良してください」という話を持ちかれられたエピソードが語られる。
早速IDEOではチームが結成され、それぞれオフィスを離れてスーパーで実際にカートを使っている人々を丹念に観察する。はしゃぐ子供に難渋する母親、カートを置き去りにしてアレコレと買い物に走る人、実際は壊れやすいカートを丹念に修理している裏側・・・そういった実情を踏まえて社内に戻り、ブレインストーミングが行われる。様々なアイデアが書きおこされ、検討されるやいなやただちに別にスタッフ達によってプロトタイプが作成され、またチームはそれをみるやブラッシュアップする。ぶつかっても安心なように、カートを離れても、また大量に購入するもので壊れやすいものが痛まないようにカートのケースを分割させたり・・・なんだかんだで1週間に物にしてしまったそのカートは、実際のスーパーの店員達も注目してしまうほどの出来だった。
つまり、これがIDEOのメソッド、「理解・観察・視覚化・評価と改良・実現」ということ。
これは単純に物を作る(例えば工業製品とか、プログラムによるシステムとか)だけではなく、様々な業務においてもいえるだろう。
そしてこの本ではそういったメソッドを支えるはずなのに見過ごされがちな一面、つまり環境や社風についても述べられる。自由で快適な職場環境が自由な発想を生む。そして、仕事に携わるチーム(スタジオ)の中に「彼ら」「あの人」はなく常に「我々」という意識(全員がチームとしてコミットしているということだと思う)をもつことの重要性など・・・。
ここ数年、工業製品としてのモノについての意図とかを考えるようになったけれど、非常に示唆にとんだ本でした。まぁ、アメリカだからできる芸当でもあるのだけれど、自分自身耳が痛いくだり(つまり、多機能ばかりを詰め込んでユーザーが本当に望んでいるものを提供していないなど、自分も注意しているけれど、この本に書かれたあるデザインの改良についての話はそのまま自分がいま考えているアイデアについて示唆を与えてくれました)もあったのも事実。ユーザー・インターフェイスとかはよくよく観察しないといけないしなぁ。
この本でも語られているように、正直今のWebデザインのバカバカしさ(見栄え優先でユーザビリティがあまり考慮されていない)など、もっとイノベーションするところはありそうではある。
そんなわけで、ある程度グループを纏めていく立場の人、仕事についてプラス・アルファを形成したい人、モノを作って提供している人、そんな人々にお勧めです。なにもデザイン関係の人達ばかり読むものじゃないですよ!この本は。
関連リンクとして、
「IDEO特集」(小林雅のブログ-ベンチャーキャピタリストの独り言)
「イノベーションを創出する IDEOマジック」(「ECIFFO」)から。こういう雑誌はいいなぁ。オフィス系(作業環境とか)を特集する雑誌は良く買うんだけど、こんな雑誌があるなんて知りませんでした。特にメモ!
また、プロトタイプを作り評価、改良を続ける方法としてソフトウェア開発関係として非常に示唆を受けたことのある本も合わせて紹介します。
ピアソンエデュケーション (2000/11)
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こちらも以前の書評で取り上げましたけど、改めて。
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