誰が太平洋戦争を始めたのか (ちくま文庫 ヘ 10-2) | |
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わりとその筋では有名な第1次大戦を取り扱っているWeb「第1次大戦」のサイト管理者が書いた太平洋戦争に関する評論。内容そのものはWW1の日本についての記述やそれまでの著作にオーバーラップしているけれど、「日本の太平洋戦争は何が主因なのか」にかなり凝縮されているのでお手頃といえばお手頃か。
自分もここ数年、日本の太平洋戦争は何がきっかけでどうして止められなかったのか?という点について色々考えるところ大だったのでいいタイミングの本でした。
この本には自分も疑問に思っていたことやある事象のもう一つの見方について面白い示唆をしていましたね。
・そもそも陸軍は泥沼の中国戦線から手を抜きたがっていた。
・よって陸軍は国民党に近いドイツと同盟することで国民党との和議を目指した。
・政治サイドは国民党との数度の和平のチャンスをあえて潰していた。
・さらにドイツの快進撃を見て、尻馬に乗っかりアジアの利権拡大を目指した。
・一方の海軍は、ドイツと同盟したところでメリットはないのは理解していた。
・ただし、ドイツと同盟することで東南アジア進出についてはメリットを理解していた。
・ただし英国と戦端を開くと自動的にアメリカと戦争状態になると考えていた。
・またアメリカのビンソン計画に基づく艦隊整備計画によって、日米の
海軍軍事バランスがアメリカに寄ることを危惧し、軍事バランスがまだ日本より
であるうちに軍事行動を起こすべきではないかという考えに傾倒していった。
・昭和天皇は一貫して太平洋戦争については反対の立場をとっていた。
しかし、自分も知らなかったのですが、ルーズベルト=近衛のハワイでの首脳直接対話があと一歩まで近づいていたのは知りませんでしたね。
もし、それが目論見通りすすんでいたのなら、日本はまた違う歴史を歩んでいたかもしれません。
では一体全体誰が? 僅かにあった非戦の道を潰したのは誰なのか? その答えの一つがこの本に書かれています。
ネタバレになるのですべてを書きはしませんが、自分がひょっとしてと考えていた仮定を補強されたかのような結論でした。
「部分最適化は必ずしも全体最適化にはならない」。TOC理論の有名なフレーズですが、国家もまた同様で「省庁の利益は、必ずしも国家の利益=国益とはならない」。
そして、人は決して進歩するわけではない。後退するときもあるのだ。という事例。
戦争に至るまでどうして手の施しようのない政治的、権力的茶番劇が繰り広げられることになったのか、この本は明らかにしています。
というわけで、戦争に至る道筋の一つの解釈(それ以外の解釈もあるわけですから)を知りたい人にオススメです。
組織にいる人は読んでおいてソンはないんじゃないかな、と思います。
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