小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫) | |
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わりと個人的なツボをクリティカルでヒットしつづけてくれたことで印象に残っている「ピクシーワークス」の作者が書いた第2弾小説。
技術的レベルには1950~60年代あたりかなぁ。ジェットの夜戦機が飛び交うまんまスペイン内戦を思わせるような状況下で、第三国での騒乱に乗じて各国の思惑が交差して大混乱、という戦況。
その中で夜戦で鳴らしたエース・パイロットが本国帰還を命じられて戻ってきてみると、天才少女が待ち構えていました...というお話。
っていうか、9月に出ていたのにイラストでスルーしてしましたよ汗; だれがこのカバーイラストでやってる内容がネジが外れたマッド・サイエンティスト同士のエスカレーションをやっていると思うんだろうか、はい...。
うん、内容のほうはわりと中盤から終盤へかけてのなんていうか、タガが外れた情け容赦ない新兵器開発レースに乾いた笑いを起こしつつ読んでみるのが吉かなぁ。
本当にカバー帯に書かれていたように「御伽話(ウイッチ・テイル)」として読むのがいいかな。
無邪気っていうか、がつがつ開発される新兵器(っていうかそこらへんは突っ込みどころではないので)、バタバタ死んでいく人々、それとは変わりなく瞬く夜空の星、オウロラ。そこに舞う戦闘機たち...そういう物語です。
前作「ピクシーワークス」もそうでしたけど、作者、基本的に才能と理性を縛る常識とか倫理とかが欠けているような登場人物たちを出してくるのが多いなぁ。まぁ、それも有りだと思いますがw
人間が理性と常識の下に生きているのならこの世の揉め事の大半以上は起きていません。そこには感情が常にヒトを揺り動かすわけですからね。
戦う必要がないのに戦うのも、任務において戦うことを求められて拒否することもすべてはヒトの感情のなせる技なわけです。そういうわけでクライマックスの空戦は、そういう状況を描いていて、まぁなんというか...無常観を漂わせるに十分な話でした。
まぁ、私も個人的にはヒロイン?格であるアンナリーサより、主人公を下僕扱いしているリード姉様がツボでしたけどね。ありゃ無理。絶対無理。主人公に対する刷りこみ(インプリティング)の順番、絶対に間違えたよ! 露骨にアプローチしたって無理だねw
続きはなさそうな終わり方ですが、個人的にはこれでも満足かなぁ。
ライトノベルらしくない淡白な感情描写とかがあるから、ちょっと異質かも。そういうのを求めていない空戦好き、科学の暴走万歳?なヒトにはお勧め、です。
さて、あとがきに書かれているようにグロスマンの有名な本(自分も以前とりあげた本ですが、未読の方は是非)が発端だったようですね。
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殺人に対する心理的障壁を下げるようマインドセットを施されていない兵士は、(特に陸戦では)戦場へ出ても一定数の割合で人を殺せない。それがグロスマンがいうように人間の根幹にある善性なのか、それとも動物的忌避なのかはわかりません。それでもなお人を殺す人は一定数確実にいるわけです。
��と、同時にどれだけマインドセットを施していても人の心は戦場では数ヶ月で疲弊し、擦り切れていくのです。戦地から安全な地へ戻すのも1ステップを置かないと深刻なPTSDを起こします)
ヒトの最悪の中に見せる善性とは一体なんなのか。それが善性だとしたら、それがあるにも関わらずヒトが戦う理由は何なのか。悩ましい問題ですよね。
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