2005年3月23日水曜日

戦争における「人殺し」の心理学/デーヴ・グロスマン

戦争における「人殺し」の心理学
デーヴ グロスマン Dave Grossman 安原 和見
筑摩書房 (2004/05)
売り上げランキング: 5,793
通常3日間以内に発送
おすすめ度の平均: 4.67
5 すばらしい
4 戦争の悍しい実態を垣間見る思い。
5 戦争についてずっと知りたかったこと


ここ半年あまりで一番衝撃をうけて、ゆっくりと読む本となったのがこれです。なんだか、二週間ぐらいかけてゆっくりと読んでいましたよ。

著者は第82空挺師団"オールアメリカン"に在籍していたこともある軍人で、主に戦場において人を殺すという行為が、第二次大戦以前と以後でどのように変化したのかを克明に書いています。

自分にとって驚きだったのは、ナポレオン戦争時代のマスケット銃の命中率の低さが当時の技術レベルからではなく、単に兵士の大勢が狙いをつけて撃っていなかった(相手の上へ目掛けて撃っていなかった)ことにも起因するというあたりからでしたね。南北戦争では、兵士が「撃ったフリ」をしていた実例が多く残っているとか。
大体、第二次大戦で兵士の相手兵士に対する発砲率が15~20%っていうのは、知らなかった事実でした。

兵士が人を殺すことをいかに正当化するか、例えば、戦友愛、敵の非人間化(ヤンキーだとか、モンキーだとか、まぁ、言うなればありがちな話です)、目的の正当化(民主主義の優位、対テロリスト、対宗教、その他もろもろ)、そして殺すことに対する衝撃度合いは、その距離に反比例(つまり、近くなればなるほど殺すという衝撃は多くなり、遠くなれば少なくなる)するなどといった事例も数多く紹介されます。
戦場での様々なエピソードを交えて(それらはすべて在郷軍人達のインタビューから、WW2、ベトナムなど戦いで実際に人を殺した兵士達から集められています)、「戦場において人を殺す」という行為がいかに行われてるのか。ということに関して丁寧に記述されています。
「戦場では98パーセントの兵士達が心に傷を負う。残りの2パーセントは人を殺すという点においてなんらの罪悪感も抱かない」というくだりもすごかったですが。


そしてなにより、東京大空襲、ドレスデン爆撃などの都市に対する無差別爆撃が及ぼした効果を研究した結果、「さほどの効果は得られない」ということが判明したのだ。というくだりはなんというか(結局は被害を受けた国民を奮い立たせる結果となり、継戦能力にさほどの影響をおよぼさない)・・・東京大空襲から60年。あれを戦争犯罪であるという意見もある中、無常さを感じさせます。であるからこそ、ベトナム戦以降、米軍があれほどピンポイント爆撃に収斂していくのもわかります。都市部において、「ピンポイント」で攻撃するという恐怖をあじあわせることも主眼の一つなのですから。

第二次大戦では20%以下の発砲率も、その後の研究と訓練手法の変化に伴い朝鮮戦争で55%。ベトナム戦争で90%になっていきますが、結局その訓練手法は、手っ取り早く言えば「フルメタル・ジャケット」でのハートマン軍曹がしてみせたような強ストレス下での訓練手法だったりする。つまり、感覚を鈍らせるのだ。
だが、ベトナム戦争ではそのような訓練を施した兵士に対して、なんらのケアもすることなくアメリカ本国へ戻してしまったためにPTSDが続発。アメリカが長く深い傷跡を背負う羽目になってしまったという(無論、アメリカ国内国民の行為も悪かったのだが)

それを防ぐためには、兵士達を隔離し、時間をかけて緊張感から解き放たねばならないという。おりしも数ヶ月前、陸上自衛隊のイラク派遣部隊が日本に戻る際に、部隊単位で移動し、武装を解き、アルコールを与えて、それぞれの感じたことなどを思い思いフリーに語らせているシーンがNHKで流れていたが、ああ、なるほどと合点がいった。

戦地、もしくは高ストレス環境下から戻ってきた軍兵士に対して、後方の国民はいかなる形で彼らを向かえればいいのか、それも示唆に富む話が数多く書かれていたりする。

そして、現在、アメリカを被うメディアによる殺人に対する障壁低下(つまり、広範囲で軍での訓練が行われている。そこでは殺人を躊躇うことなく行うヒーローの存在があったりすると作者は指摘する)から、表現の自由にある程度の制限をつけるべきだと書いていますが・・・ああ、なるほどそれは一理あるかもしれません。

軍隊に興味があるなら、読んでおいて損はありませんぜ、いや、本当。

ハチミツとクローバー 7/羽海野 チカ

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羽海野 チカ
集英社 (2005/03/18)
売り上げランキング: 22
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 5
5 この漫画はすごい☆
5 よくやった☆竹本くん!!
5 青春キング万歳☆


アニメ化にまでなっちまうとはなんというか、いや、良作ではあるのだけれどなー、アニメでどれだけこの作品世界の独特な間を表現できるか、微妙だなぁと思うのだけれど。

この巻ではようやく竹本の旅も終了。長い夏休みも終わり、いい加減物語も動いてくれないと困るよ、いや、本当。
森田を筆頭に永遠ループの真っ最中的なキャラが多い作品なのだが、ここらで収束へ向けて話を動かしていかないと(真山には微妙な変化が訪れているようなのだけれど)、どうよ?と思うのだが・・・。

しかし、今回一番ワケがわからないのは、たった一話しか出てこなかったローマイヤ先輩(それも初期なのに!)の心温まるエピソードだったりする・・・いや、面白いからいいんだけどね(w

2005年3月22日火曜日

BLOOD ALONE 1/高野 真之

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BLOOD ALONE 1 (1)
posted with amazlet at 05.03.22
高野 真之
角川(メディアワークス) (2005/02)
売り上げランキング: 319
在庫切れ


吸血鬼である少女、ミサキと小説家であるクロエは、今日も街の片隅で暮らしていく。ミサキは決してクロエの血を吸わず、与えず、パートナーとしてクロエを見て、クロエもまたそんなミサキと共に暮らしていく、光の下には出られないが、夜の黄昏の中に生きる、そのなんということはない時間――。

発売当初に買い逃して、札幌市内を駆けずり回ったあげく結局はbk1(Amazonも在庫切れだったし!)で購入する羽目になった作品ですが、その、なんですね、作者が同人誌で書いていたネタだということは、以前に知っていたのですが、どうも似たような話をどこかで読んだことがあるような――っと思っていたら、Amazonレビューでいい表現が書いていました。

吸血鬼版、「Papa ToldMe」。ああ、なるほど! 確かに!

しかし、親子という関係ではないしな、まだ語られてないキーワードが作中で出てくるし。レンフィールド、新生(ノウルサリート)という言葉は、確か「ドラキュラ紀元」にも出てきたような――さて、吸血鬼であるミサキが誕生した理由も、クロエのもつ能力もすべてが語られているわけではないですし、どう落ち着くことやら――。でも、実はこの作品世界は大好きなのです。はい。

皇国の守護者 1/佐藤 大輔原作 伊藤 悠著

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皇国の守護者 1 (1)
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佐藤 大輔 伊藤 悠
集英社 (2005/03/18)
通常1~2週間以内に発送


架空の<大協約>世界。空は龍が舞い、地には剣牙虎と呼ばれるサーベルタイガーがおり、人とて、両性具有者、導術と呼ばれるテレパシー能力をもつ者がいる、そんな世界。技術レベルはナポレオン戦争あたり。そんな舞台の中で、日本的なものを感じさせる皇国とロシア-ドイツなものを感じさせる帝国との間に、経済的問題が発生。
皇国の北領に上陸した帝国軍は、戦姫ユーリアに率いられ、皇国軍を一蹴する。敗走する皇国軍の殿(しんがり・・・最後尾にて味方を逃がす損な役目)には、実験部隊の剣虎兵(サーベルタイガース)大隊がおり、そこには兵站幕僚の新城直衛中尉がいた――。

というわけで、皇国の漫画化っていう話を聞いたときには驚きましたが、作者の巧みな画力と構成力でいい漫画になっていると思います。原作が1巻2巻同時発売されたときには、あまりの時代背景の巧みさに感心しましたが、そのビジュアルを上手く表現していると思いますね。また新城の臆病さと狂気さを現し、兵を操り、そんな自分の愚かさに腹を立てる複雑さもいい感じです。天龍(ドラゴンというより東洋の龍)である坂東一之亟もそうくるか、というデザインですしね。まだ原作1巻の1/3というところですが、ここから怒涛の軍勢を迎え撃ち、敗走の中での遅滞行動という軍事モノではケレミ味たっぷりの戦いが描かれることになります。期待して続きをまってますよ、はい!

2005年3月16日水曜日

ザ・ホワイトハウスS-3第21話「平和の陰に」“POSSE COMITATUS”

原題、"POSSE COMITATUS"は直訳すると、民兵隊壮年団(ラテン語では"MS ゴシック">possible force)なんですけど、最初どんな意味かわからなかったんですが、答えは作中、
フィッツウォレス統合参謀本部議長が言っているように、「治安活動に陸軍と空軍は使用できない」(除く海軍/海兵隊)という、THE
POSSE COMITATUS ACT(条例)からとられているようですね→"http://www.rand.org/publications/MR/MR1251/MR1251.AppD.pdf">■


どひゃあ、知らなかった……調べれば出てくるなぁ、こういうネタ。
PDFをザッと眺めた限り、どうやら南北戦争あたりもからんでくるようですが、これはしばらく宿題とさせてください(w



さて、架空国家クマーの国防大臣シャリーフがテロリストの主導者であることが判明し、
フイッツウォレス統合参謀本部議長を筆頭とする国家安全保障担当のメンバー達は、シャリーフの暗殺を大統領に求めますが、
この手の判断は難しいところです。

テロを防ぐためには何が最適なのでしょうか。現在のローマ帝国たるアメリカは異なる考え方と対峙していくのか、興味はつきませんね。
書けば長くなるので端折ってしまいますが。




ドラマの作中では、悩む大統領に対して首席補佐官が「大統領であるからこそ」暗殺計画実行の指示を求めますが、
その直後に大統領候補の知事と面談し、一方でS.Sのサイモンが撃たれた事件について「犯罪は良くわからない」と逃げた知事との「覚悟の差」
、つまり、権力を操ることの難しさを明確に映し出していると思いますが、もうここらへんは脚本もさることながら、BGMといい、
カメラワークの勝利ですね。

また錯綜するストーリーの中で、トビーとサムのほとんどボケとツッコミのような(一応上司と部下なのですが)やり取りや、ジョシュのタフ・
ネゴシェーターぶりなど(まぁ、ジョシュの言いたいこともわかるんですが、そういう反論の仕方じゃあ納得せんだろうとは思いますがね)、
中々の見所満載でした。チャーリーが新しい秘書について奔走する理由もさらりと述べられたりと、なかなか上手い着地だと思いますよ。


S-4はどこから始まるのやら。
選挙だってまだ結末を迎えていないのに!? そりゃないよ!って感じですが。


さて、SS-3ラストの重箱の隅的なネタをいくつか。

エアフォース・ワンって?

基本的には大統領が乗る空軍機のコードネームですので、B747ベースの今の機体単独のコードネームではありません。大統領が降りると、
その機体のコードで呼ばれます。副大統領が乗る機体もあり、こちらはエアフォース・ツー。
ちなみにホワイトハウスに乗り付けるヘリは海兵隊所属ですので、マリーン・ワン。副大統領であれば、マリーン・ツー。
外国首席の場合はステート・ワン。陸軍機体に乗るときはアーミー・ワン。海軍機体はネービー・ワン。
民間機に乗る場合(以前はあったそうです)はエグゼクティヴ・ワン。大統領の家族が乗る場合は、エグゼクティヴ・ワン・
フォクストロット(Fのコールです)。

ここ最近、色々な雑誌を読むとマリーン・ワンの次期機体候補で揉めているらしいですね。そりゃ大統領が乗る機体が欧州製なら、
アメリカ国内の航空機産業は良い顔しないわな(w


シークレット・サービスって?

設立当初は財務省管轄の贋金摘発を目的とした組織でした。
"MS ゴシック">大統領の暗殺事件発生に伴い、第二の任務として大統領警護も行い、大統領の座を降りても終生その警護は続きます。現在、
9.11テロを受けてブッシュ大統領提案による国土安全省(DHS)に編入されて今にいたりました。


さて、S-3もこれで終了。S-4が始まるまで、時折合間を見てS-1、
S-2のネタをインサートしていこうかと思います。

お付き合いしていただき、ありがとうございました>このカテゴリーを見ていただいた皆様。


 



2005年3月14日月曜日

ほしのこえ 佐原 ミズ/新海 誠

ほしのこえ
ほしのこえ
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佐原 ミズ 新海 誠
講談社 (2005/02)
売り上げランキング: 1,222
通常2~3日以内に発送
おすすめ度の平均: 4.11
5 違った角度から見た「ほしのこえ」
4 ほしのこえ
4 原作ファンをがっかりさせません


ふむ、こう料理して出てきたか。という一品。非常に繊細な、リリカルな作品になっていると思う。
「ほしのこえ」(のパイロット版)を始めて見たときの衝撃、背景の美しさと物語の繊細さを思い出した。

宇宙空間と時間に隔絶される人間関係というのは、SFネタとしては非常にベタだ。
「終わりなき戦い」などを持ち出すほど古いネタを引っ張ってこなくても、「トップをねらえ」がある。
それでも、この作品は鮮やかに青春と携帯というガジェットでそれを描き出すのだ。

いささか、その時に感じた懸念は、「雲の向こう、約束の場所」で現れて、どうにもこうにも背景美術や表現に物語が追いついていない感があるが、逆に言えば、それだけの舞台を作れるのなら、もっといい脚本を描いてほしい。というのが正直なところなのだ。次回作でどういう答えを導き出してくれるか、期待している。

それはともかく、そのコミック版だ。オリジナルキャラも出ているが、ちゃんと筋をはみ出ることなく「ほしのこえ」世界を補完している、いい作品だった。良作です。ただ、原作を読んだ上で、という但し書きもつけておきますが。

2005年3月13日日曜日

まぁ、なんとか今回は。

「人権擁護法案 国会提出当面見送り 自民、党内合意得られず」
"http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050312-00000005-san-pol">http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050312-00000005-san-pol


まぁ、なんとか時間の余裕が出来たみたいですか。YAHOO!のヘッドラインだと今国会の提出見送りなのか、
さっぱりわかりませんので、この件に関しては、"http://blog.livedoor.jp/no_gestapo/">http://blog.livedoor.jp/no_gestapo/をみるかぎり、
とりあえず継続審議ということになりましたか。

2chで流れている自民党部会の議事録を見るかぎり、まぁ、よく国会提出が止まったな、とは思いますが。

この件に関しては引き続き注意していく必要があると思います。



自分がこの法案について疑念をもって反対しているのは、

・表現の自由、
報道の自由には何らかのガイドラインが必要であるのは一定の理解を示すが、恣意的なものが入り込むことを極力避ける必要がある。
(三権分立が何のためにあるのか!と書いたのはこのせい。
一方の権利があればそれを監視する権利もまた必要だと自分は思っています)

 国籍条項もなし、罷免権もなしでは危なっかしいものです。

・大体、
人権擁護局があるのにこれ以上の外郭団体なんていらんだろう!?

というのが主な理由で、
もう一つには、

・メディア規制法案を凍結しておけばOKだと思うマスコミにも信用ならん。


とかがあって反対しているわけです。



まぁ、ぶっちゃけ言えば、非常に裏に胡散臭いものを感じてしまうのですよ。

少々の胡散臭さならばスルーもしますが、基本的人権にかかわることで座視するとロクなもんではありませんからね。いや、ほんとう。