スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800)) | |
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積んでおいた本を読破しにかかって、これが一冊目。
平凡な、ドロップアウトに片足を突っ込んだ大学生の主人公坂上悦郎がのめりこむ格闘ネトゲの世界。
その世界では彼は空手家のテツオとなり、いつかトップになりたいと夢見る。
だが、ある日彼がテツオとなりネトゲに接続するとトップのプレイヤーたちを続々と倒していく謎のプレイヤーがいるという噂が飛び交っていた。興味をもつ主人公ではあるが、回線を切ればもとの平凡な大学生にもどる、はずだった。
憂鬱な雨、雑多なSEを奏でるリアルな世界で彼の横に座った秀才肌の薙原布美子に差し出した出席カードを見て、彼女はある言葉をつぶやく。それはリアルの世界のちょっとした旅の始まり。
その日から、彼はときにネットに接続し謎のキャラを探し、リアルでは布美子との恋愛に達しきれない日常を送ることになるが、不意に訪れる破綻。
布美子とのすれ違いのあと、主人公は思う。彼女との特別なルートがあったかもしれない。彼女との出会いは、主人公自身にとっては幸せだけれど、彼女にとってはどうだろう。と。それでも彼はネットに接続して答えを見つけ出す。その答えとは…。
自分もガキの頃からネットに接続し、バーチャファイターにはそれこそとんでもない額を放り込んだ。
とはいえ不思議とトーナメントとかに出るほどの意欲はなく、せいぜいごくまれに(強いプレイヤーがいるという)ゲーセンに足を向けて、もまれて帰ってくるだけだった。ま、ぬるいプレイヤーだったことには違いない。
物語で語られる格闘ゲーの描写は、まさしく自分がたどった道でもあって非常に楽しめた。
レバーを軽く振動させるように、ダッシュをしかけPPP。相手が自分のコンボを読ませたと思わせて、中段ガードor下段ガードにはいったところで、キャンセルをかけてフリーズした相手に投げ技or立ち技コンボ・・・。
すべてが懐かしい。
ネットに接続して、バーチャルなキャラをロールプレイしたとしても、それは現実の自分にほかならない。そして、現実である以上は、すべて自分の身がおきて、ふりかかるものなのだ。そして彼はそれに気がつく。何かを捜し求めることは、どこであっても変わらないのだと。
いい作品でした。早いとこ読むべきだった。というわけでオススメです。
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