人魚とビスケット (創元推理文庫) | |
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というわけで、小説家桜庭一樹氏が「幻の傑作」と書いていたとかいないとか、以前にマーケットプレイスで購入していて積読だったので、積読解消月間にあてた今月、読破することに。
新聞に実際にあった三行広告での奇妙なやりとり。今でいう2chなどの匿名掲示板でのやり取りの中で、ビスケット、ブルドック、人魚、そしてナンバー4と呼ばれる人物達が、ある出来事に加わっていたことがわかる。作者はあるきっかけから、この四人のうちの一人と連絡を取り合うこととなり、その「出来事」の真相をしることになる・・・。
冒頭での、新聞の三行広告が織り成す鮮やかな疑問を呼び込む導入部があったりして、最初からぐいぐいと物語に引きずり込む。そして物語は一転、書き手がであった人物たちの過去、第二次大戦での遭難話に場面が展開する…。緊張状態と込み入った人間関係は決定的な破綻を見せる。
そして舞台は再び戻って、作者は予想外の結末に遭遇することになる。
海洋小説は、狭い空間に酷寒、酷暑、飢え、乾きという問題が降りかかり、時代や舞台によってはこれに襲い掛かるUボートとか鮫とかがプラスされるわけで逆境の小説なのだけど、この本ではさらにこれに
ミステリが組み合わさって、なんともいえない読了感を感じることに。
自分にとっての海洋小説は大きく二つあって、一つは戦争などの極限状態を描いたもので、
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に代表される、極限状況下で男達が悪戦苦闘する話も好きだ。このほかにも、あまりメジャーではないが、海洋小説の大家、ホーンブロワーシリーズを書いたフォレスターの、
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だって中々のものだ。ユリシーズとはちがい、こちらは艦長に焦点があてられているが、極寒の北大西洋での護送船団と、それに襲い掛かるUボートとの対決という手に汗握る戦いがこちらにはある。
一方、海洋小説の醍醐味の一つはやはり難破モノで、
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のような、難破し、居合わせた生き残りの乗客乗組員が織り成す愛憎劇も中々のみどころだったりするわけで、そういう観点からすると「人魚とビスケット」は後者+ミステリ仕立て。という装いだったりする。
「人魚とビスケット」はちゃんと読まないとどこに伏線が眠っていたか判らず、最後に「あれ?」と思う終わり方なので、自分も慌てて読み返して伏線回収していたりしていたけれど、海洋遭難+ミステリ、そして実話だという冒頭の奇妙な三行広告のやり取りという三つの舞台の異色のコラボでした。
海洋小説がお好きな人で未読な人は読んでみてもいいかも。
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