工場で作られた7.62mmの弾丸が木箱に詰められ、港から海を渡り、アフリカの某国へたどり着き、これまた現地のゲリラとおぼしき連中の手に渡り、マガジンにこめられ、そして少年の頭へとたどり着く・・・というオープニングで幕が上がる映画。
主人公はロシア系移民としてアメリカの底辺にいるが、ある日マフィアの抗争に出くわし、武器取引の道を切り開いていく。最初はイスラエル製サブマシンガンを売りさばくだけで、武器商人からも相手にされない。だが、彼の才覚は目覚しく、アフリカ、アフガンと武器密売で財を成していく・・・が、その途中で共に商売を始めた弟は麻薬に逃避し、厚生施設送りとなってしまうが。
初恋の女性にアレコレと手を回して結婚まで漕ぎ付け(当然自分の商売は明かさない)、冷戦終結によるマーケット拡大にいち早く乗り、 "事業"を拡張していく・・・主人公。彼を狙うインターポールの捜査官もいるのだが、あくまで合法的に処理を進めていく主人公を捕まえきれない。というのがストーリーの前半部分。
半ば自嘲的に軍オタとか書いている自分としては観る前から果てしもなく陰惨かつ陰鬱かつどうしようもない結末になるだろうと思っていたが案の定そうだった。
しかし、観なきゃなるまいし、観ておいて損はないと思ったし、事実観ても納得している。これがドキュメンタリーなら目も当てられないが、映画という一線があることでまだ観れる形となっているというべきか。観てみるべきの映画です。観終わったあと、どっと疲れるとは思いますが。
作中で出てくるカラシニコフAK47はコピーも多い。アフリカでは作中でも言われているように恐ろしいほど安い金額で手に入る。日本円で500円とかいう話も読んだことがある。中国産のものなら66ドルらしい。まぁ、これでも高いほうだろう。フィリピンあたりなら米軍のM-16で3万円程度という話も聞いたことがある。(ちなみに日本の陸自で使われている89式小銃で33万円。べらぼうに高いと思われるが、日本国内のみだから生産数によるコスト軽減が発生しないため)
では武器商人は悪徳な奴なのか。いや、そうではあるまい。結局のところ、その影響は微々たるもので、どっちにしたってアフリカや中東、中央アジア、ヘタすれば東南アジアでも虐殺や民族浄化や宗教紛争は発生するし、しているのが実情だ。小火器が圧制者の手にわたるのか、抵抗者の手に渡るのか、もしくはテロリストの手にわたるのかの違いだけだ。
武器商人の商談が成立するということは政治的、経済的対立が発生し、なおかつ武器を購入するだけの財力が発生するということで、その裏には作中でも語られるように国連常任理事国の国々の思惑があったりする(だって、利益がないなら金が生まれないし、武器も購入できないでしょう?)。
たとえば、あまり日本のマスコミでは報じられることが小さい、一昨年から続く過去にないジェノサイド、その犠牲者数30万人!?とかも言われるスーダン・ダルフール問題の裏ではどうも石油利権があって中国がくらいつき、中国市場をマーケットにしたいフランス(TGVやら軍需産業やら色々と売りたいものがあるので)はこれの尻馬に乗っており、イラク問題でそれどころではないアメリカはダンマリというか及び腰であり、日本はこともあろうに当事者であり虐殺を行っているスーダン政府に対する凍結していたODAの解除を行うことを考えていたようだ。気になって外務省のスーダン概況を見る限り行われてはいないようでホッとしたが。
溜息が出るが、これも世界の現実の一つだったりするのだ。
そして、こういう国々で武装解除を行うというのがどれだけ厄介かもわかるだろう。もう、有体に言えば理想論や建前ではなく現金ちらつかせ、頬を殴り飛ばしてでも取り上げる気構えとコミットメントする勇気が必要になる。とはいえ、そんなことをしたところで利益が出るわけでもないから、あまりやる気にならないのが常任理事国や先進国の本音ではあるのだが。
というわけで参考まで以前取り上げた本を。
武装解除 -紛争屋が見た世界 | |
伊勢崎 賢治 講談社 2004-12-18 売り上げランキング : 9,738 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
はじめまして。
返信削除【人材バンクネット】「「キャリア&転職研究室」編集部の山下と申します。
当サイト内で、伊勢崎賢治氏インタビューを掲載しています。
お時間があるときにでもお読みいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
●魂の仕事人 伊勢崎賢治氏インタビュー
http://www.jinzai-bank.net/edit/info.cfm/tm/021/