2005年1月3日月曜日

軍事のイロハ―バカな戦争をさせない88の原則

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別宮 暖朗
並木書房 (2004/11)
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筆者は、「第一次大戦」のサイト運営者ですが、そこでの掲示板でのQ&Aを元に、軍事と外交に関する簡単な質疑応答。という形で第一次大戦(WW1)以降の軍事と外交についての定義・・・例えば、戦争はいつどのように始まるのですか?といった質問から、戦争にいたる様々なもの、たとえば戦争計画、作戦計画の違いに関してなど・・・について、歴史の事例を用いて説明しています。

この作者のWW1に対する勃発原因は、大体の高校あたりで教える理由とは異なっており(参考として、高校生向けの政治・経済学の講義ノートをあげておく(自分としては、末尾にあるように国境のない時代。というのは現状把握がなってないと思われるし、ある面では頷ける部分もあるが、歴史的認識では甚だ見解が異なると思う。特に近代国際政治史については、作者とは真っ向意見が異なっているが、大抵の学校での平均的な講義内容だと思われるので掲載した)。
学校で教える、イギリスの3C政策とドイツの3B政策の対立。という理由では、結局のところ、「ではオーストリアの皇太子がサラエボでテロで暗殺されたからってどうして世界大戦に?」という疑問に答えることは難しいと自分も思いますね。

作者が言うように、ドイツの戦争計画「シェリーフェン・プラン」に引きずられる形で発生したと捕らえると、非常にわかりすいものとなります。
詳しくは以前紹介した「8月の砲声」にあるように、"一度動き出した作戦計画は止められません!"なんてヨタな台詞が軍トップから聞こえるほどドイツのこの手の戦争計画は極めて自動的かつ硬直したもので、ロシアとの対立が決定的となった時点で→フランスはロシアと手を結ぶに違いない→ロシア、フランスとのニ正面作戦は話にならない→しかし交通網が発達していないロシアよりフランスのほうが早くに兵力動員から前線へと兵力を配備できるにちがいない→であれば、先制攻撃が必要→ただしフランス正面は要塞があるため突破が難しい→では隣国ベルギーを経由して正面を迂回しよう→短期間にフランスを制圧し、返す刀でロシアに対峙しよう。というのがシェリーフェン・プランの根底にある問題で、作者のサイトにもあるように、また「8月の砲声」にもあるように、ベルギー侵攻に伴う英国の参戦についてはさほど考慮されたそぶりはなく、正しく「手段のために目的を無視した」戦争計画のために戦争が起きた、と見るべきではないかと思います。

そういったわけで、極めて初歩的な軍事と外交の言葉の定義から、現在のアフガン-イラク戦争とつづいたあとに見える非対称戦争にどのように備えるか、またイラク戦争におけるアメリカの対応などについても書かれており、非常に時事に対応していると見れるでしょう。ちょっと考えたい方にはお勧めかと。ただし、問題なのはこの本を読んですぐに納得できる人はあまりこの本のありがたみが沸かないでしょうし、読むべき人は最初っから興味も持たないのではないかという点があるのですが(w

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