北方領土奪還作戦 7 (7) (C・Novels 34-73) | |
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北方領土奪還を目指すKE作戦を描いた物語もこれで完結。
...い、いや、いいんですけどこれだけ核爆発が飛び交う話も珍しいというかなんというか...。戦術核レベルとはいえ、ねぇ...。佐藤大輔作品の「征途」も海上爆発とはいえ、戦術核の大盤振る舞いでしたけど、今度は陸上ですからね。これだけ核もインフレ化するとハンパないなぁ。何か、アメリカ人作家よろしく核について"ちょっと大きな爆弾"ぐらいしか思ってないようなノリですけど...。
毎度のごとくトラブルに巻き込まれる自衛隊特殊部隊サイレント・コア。新兵器として今回は89式FV改が登場するんですけど、けど、ねぇ。(あ、この設定はアリだと思いますよ。自分もそういう形であの車両が改造されるのはいいんじゃないかと思うので)
もともとサイレント・コアが出てくる作品は、サイレント・コア+新兵器により相手部隊を完膚なきまでに蹂躙する、みたいなオチが多いんだけど、今回もコレか!?というのが、正直ありまして...。いや、司馬さんとかひどい目にあったりサイレント・コアも世代交代か?っていうノリもあるんですけど、でもねぇ。
ちょっと後半巻きが強すぎます。
以下ちょっとネタバレ気味なので下に下ろしますけど...。
こんなオチだと、そもそもKE作戦って結局なにさ、それ?って突っ込みが...。
ああいう不確定要素も込みじゃないのか、と。そこらへんちゃんと言質をとってたんだろうな、とか、色々なところが投げっぱなしのような気がするんですが。いままでの地域レベル、テロリスト集団レベルの相手ではなくて、国対国のガチンコ勝負ですよ。いくらなんでも成算について他人に褌というかイニシァティブを渡しすぎです。
総理を初めてとする日本指導者層のシーンが意図的なのかほとんど描かれてない(わりに、ちょっとした伏線じみたシーンがあるからタチが悪いというか)。
サハリン知事のエピソードも途中で投げているしなぁ。結局それならKEに手を出さないまでもサハリンにコミットメントして、サハリン独立後に北方領土の信託統治、あるいは実行支配でもよくなくね? っていう気がするんですよ。てっきり今、あちこちでネタになっている北極海航路のネタもあるから、アメリカがベーリング海の制海権にも色気を出して、サハリンからアリューシャン列島までの海上交通路を安全をほしがるアメリカと、ロシアとの綱引きでサハリン州を独立させてしまえば...とか、色々ネタがあるだけにこれじゃ、正規軍同士でガチンコ勝負しただけじゃないか。っていう気が...。
こりゃ読者ウケする戦闘シーンだけ入れてはいそれまでかと。自衛隊は損害は出したけど、この新装備でwktk、みたいな...。いや、好きですよ。そういうシーン。でもそればかりだと「ちょっとこれは...」みたいな点があって。
まぁ、大石先生の作品、最近の作品は特に政府首脳関係の流れが見えなくて、描かれるのは現場指揮官レベルで、時に防衛省のトップでさえ霞の向こうですからね。
この物語世界で、こんな結末だと陸海空三自衛隊の軋轢はハンパではなくなりそうだなぁ...。まず航空自衛隊は肝心要のときに本土防空を名目にエアカバーをはずし、海上自衛隊は艦隊を後ろに下げ、肝心要の場面で矢面にたったのは陸自ばかりという体たらく。
損害は上を見て1000人に届いて、なお放射線障害が続くハメに。こんなことでは陸自が崩壊しかねませんよ。あと、日本で大っぴらに核マターが取り扱われて、アメリカと冷風が吹くだろうなぁ。あまりいい世界にはなりそうもないというか...。
物語として、投げっぷりがいままでにないほど強いんじゃないか。という印象が強かったのでちょっとアレコレ書いてみました。
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