元々、ガンパレードマーチはPS版のゲームとして発売されました。
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どんなゲームかはWikipediaを読んでもらえば詳しく判りますが、ざっくり纏めると、"幻獣"と呼ばれる得体の知れない存在により、人類の版図は日本を含んで数箇所となってしまった世界。
そして日本はとうとう九州にも上陸される始末。ここでの防衛で大損害を出した日本自衛軍は当座の時間稼ぎとして、学兵...つまり高校生などを中心とした志願兵により九州での防衛(ま、つまるところ捨て駒です)を行うことになった。
新設なった5121小隊。そこには様々な特徴をもつ少年少女たち、そして人型戦車と呼ばれる巨人兵器が配備されることになった...。
当時としては革新的な何でもアリ的ゲーム空間(世界を救う英雄にもなれますし、小隊の誰かとキャッチャウフフしたっていいし、ソックスハンターになってもいい。ちなみに整備隊隊長の原さんに後ろから刺されるのもアリかもしれない)。
発売当初はカルト的人気になって、コミック、アニメ版と様々なメディアミックスで展開していきました。同人誌も様々に出ましたねぇ。
ちなみに、「ブラック・ラグーン」の作者が書いていた同人誌、ありゃ続き出ませんかねぇ。あれも好きだったんだけど...。ま、それはともかく。
この小説版も同様な企画でスタートしました。小説版の第一冊目は広崎悠意氏が書きましたが、ガンパレって小説としては難しいんですよね。元々なんでもありでマルチエンディングです。登場人物のキャラも情け容赦なく死ぬケースもあるので、そういうのを描いていても、正直...なんですよ。
あと、ガンパレードマーチ本家のアルファシステムでも膨大な裏設定とかがあって、小説がUpされたりするんですけど、こちらも...小説としてはいささか難があるのも事実で(世界設定は中々面白いものがあったんですが)。
で、小説版の第二冊目は珍しく作者が榊涼介氏に変更になり、今の「ガンパレ」小説版の流れができあがります。
5121小隊の結成当初から描かれた榊版ガンパレは、巻数を重ねるごとにゲーム内のイベント「熊本城決戦」を描き、その合間の幕間劇的なものとして短編を挟む...という一連の流れになります。本家ガンパレの設定も一部は取り入れますが、どうしても物語が破綻するようなシロモノ(色々ありまして...)についてはスルーするという中々絶妙なバランス感覚で、順調に刊行を重ねていきます。
ところが「熊本城決戦」あたりからその流れは見えていましたが、ゲーム版エンディングの一つのパターンでもある「九州撤退戦」を描いたあたりから、「榊版ガンパレ」として大きく舵が変更します。
それまで短編でチョイ役だったオリジナルキャラ達が総出演。ゲームのエンディングだけではない小説版での独自設定を盛り込み、5121小隊メンバーだけでなく様々な立場で戦う者達の群像劇かつ戦記的小説となっていきます。
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休戦期間ということで完全に人類側が油断していた時期に侵攻を開始した幻獣たち。
人類の中にもいる幻獣共生派などのテロなどもあって、いたるどころで戦線は崩壊していく羽目に。
ところが肝心なときに指揮官の善行や整備隊長の原が不在で、臨時隊長に選ばれた芝村舞では小隊内は軋轢が厳しくなる一方。
彼らは撤退命令を無視して、死守命令が出された学兵たち残存兵力を出来る限り吸収、あるいは離脱を援護するための戦いを決意します。
もうね、ここらへんは戦記モノ好きならピンと来るシチュエーションですね。
まるでWW2ドイツ軍の末期戦、つまり装備も人員も劣悪。敵は圧倒的な物量で押し寄せてくる中、一握りの戦闘団が戦い続ける羽目なるという状況が舞台の話がライトノベル畑で描かれるなんて!
大体、架空戦記でも大抵は勝った話ばかりなんですよ。物語的には戦術的勝利を重ねつつも戦略的には敗退というシチュが燃えるんですが。
(古くは銀英伝の同盟軍、皇国の守護者も基本的には新城率いる皇国軍部隊の勝利だけで全般的には敗走していますよね?)
ミリタリー系小説が好きな人で、ガンパレの独自設定さえ乗り越えられれば結構面白い小説になっています。
そして、ゲームで描かれたエンディング「九州撤退戦」の終了をもって、榊版ガンパレは終了...と思っていたのですが、大きく期待が(良い方向へ)裏切られることになるのは、「山口防衛線」が出てから。
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おびただしい学兵の損害を出して九州を撤退した日本。次は確実に本州上陸が予期される。学兵による時間稼ぎの間に戦力を建て直しつつあった自衛軍は日本の生命線でもある広島をなんとしてでも守りきる必要がある。
学兵はあまりの損害から解散が決定したものの、一部の兵員、部隊はなお残され、5121小隊も善行やメンバーの半分が離脱するものの、御多分に漏れず存続が決定されます。
自衛軍も初期の防衛戦の大ダメージから立ち直るために、学兵の生き残った兵達を奨学など甘い餌で吊り上げ、自衛軍の下士官として登用するなど洒落にならない描写もあって、もはやライトノベルどころではなく架空戦記小説に片足を突っ込んでいて「おお」と思わせることに。
本州に上陸した幻獣を迎え撃つ自衛軍。しかし、不可解な現象がおきて戦線は崩壊。一気に敗走する羽目に。5121小隊は陰惨な撤退戦援護を行う一方、東京から駆けつけた善行ら元5121小隊メンバーと合流して、敗軍残存兵力を再編成。諸兵科連合となった善行戦闘団となって幻獣と戦うことに...。
幻獣サイドでは、5121小隊にとっての強敵、カーミラ率いる知性をもつ存在(その姿は人間そのもの)が現れ、自衛軍を窮地に陥れる...。
これが山口防衛戦。いままでのオリジナルキャラ達も含めて様々な戦線で戦いつづける群像劇となります。で、山口防衛戦のあとは、5121小隊、生き残って今も戦い続ける学兵たちにとっての戻らねばならない場所、九州での戦いになります。
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山口防衛戦のあと、九州を奪還するため初の攻勢作戦にうって出る自衛軍。
ところが様々な政治(まつりごと)や軍閥など内部事情と、慣れぬ攻勢への戸惑いと熱狂で足並みは揃わない。
5121小隊は善行の海軍海兵団への移転に伴い海兵に所属を移すが、経験不足のわりに戦意だけは高い海兵達との共同作戦にてこずる羽目に。幻獣側もカーミラだけではない高度の知性をもった指導者たちが現れ、自衛軍を膨大な幻獣が待ち受ける罠をしかけていた...。
というわけで、一つの区切りを迎えることになりました。
メディアミックスからスタートした小説がほとんどスピンオフのような戦記シリーズになるなんてだれが想像したでしょうね。
爆発的な人気といかなくても継続的な(自分のような)購買層があったのでしょう。全シリーズ累計100万部ですよ。およそ20冊ほどシリーズででてますが、それにしてもこの結果は異例です(だからこそここまでシリーズが続いたともいえますが)
あと、ここは特に書くべきなのはこの榊ガンパレ、シリーズがスタートするとほぼ隔月で出版されていくんですよね。毎月もあったけど。
ライトノベルでも人気が出ても作者が力つきて、出版ペースが遅れるケースがままあるわけで、出版スピードが維持したとしても内容が...というケースもあるんですけど、榊ガンパレはそういうことはなし。まぁ、九州奪還の最後はちょっと展開が早足でしたけれど、食べたり無い点はまだアレコレとありますからねぇ。
続きといえばストーリー的にはなんとか、続編であるガンパレード・オーケストラの三作に繋げられるような余地は残しているのですが、どうですかね。
5121小隊のメンバーがほとんどチート級の能力の持ち主になっちゃったからなぁ。
隊の中から凡人など散々貶されている滝川にしても、物語終盤に至っては人型戦車での狙撃、火力支援のスペシャリストとして、もう一つの人型戦車小隊を率いるまでになったんですよね...。
もうこうなると5121小隊そのものがバランスブレイカーなわけで。
もし物語が続くのであれば、ガンオケの小説版のように分散して出るか、あるいはいっそ、オリジナル・キャラたち中心で描いたほうが...まぁ、色々とその後が知りたいオリジナル・キャラたちが多いんですよねぇ。特に読んだ大半が思ったにちがいない橋爪軍曹。あの三角関係にどう結末つけるのかと。
来月は、山口防衛戦と九州奪還戦の間を結ぶエピソードが出ますし、ファンブックもでます。榊ガンパレに最初から付き合っていた自分としては是非続きを。といいつつ、残りの予定を楽しもうかと...。
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