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本能寺の変も終息。明智光秀の手によって白く塗られた安土城は、千宗易の手によって紅蓮の炎と化して葬送される。それは安土時代の終わりであり、豊臣秀吉の時代の始まりでもあった。
千宗易は己が野望をすすめ、一切の無駄を省いた茶室を作り、「渋い」という概念を作り上げるとともにその漆黒の闇の中に漆黒の客人を向かいいれる。
山崎の戦いで、決意を固めた佐介もまた叙位を受けることとなり、自由に位を手に入れることが出来ることなった。彼が指差した位は織部。そう、ここに安土桃山時代から現代に名を残す数奇者、古田織部正重然が生まれたのだ!
というわけで、「へうげもの」第四巻。非常に面白い作品ですね。
端的に言えば、出てくる登場人物のほとんどが業を持ち合わせている。
山崎の戦いで出世を諦め、数奇の道を目指すことを決めた古田も、その数奇っぷりに拍車がかかり、徳川との席では彼らの必死な様に笑いつつもまんまと名も無き皿をガメてくるわ、焼き物の職人集団を抱え込むわ、荒木道糞と一品を巡ってのやり取りなど最高。最後には数奇の天下をとると宣言するまで言う始末。
そうでいながら信長から戴いた品に対して恥ずかしさを覚えたり、官位をもらうにあたって位は欲しいが武には走りたくないなどというくだりもまた面白い。
一方、この世を半ば思うがままに自らの概念を広げようとする千利休。その利休のもたらす効果を理解しつつも厭い始めた秀吉は自ら信長にならんと欲する。ただ一人、実直な上につまらないのは徳川家康という始末。いや、確かに家康の義理堅さ、堅実さはいい。部下にはいいが上司なら嫌だな。
だが、古田のような、己の欲望を肯定し、悪戦苦闘しつつ昇華しようとする様はなんとも面白く、そして楽しみだ。
手っ取り早く、彼ら茶の湯に転がった大名達のオタな趣味と言うのは容易いけれど、覚悟が違うとも思う。まぁ、当然と言えば当然なのだが。
彼らは戦国の世という、命を切った張ったする世界にいながら、それでいて己の抱え込む欲に対してドコまでも素直で実直で真剣だ。愚かさと見るか、命がけの趣味というべきか。茶器や茶の湯、茶室という、現世的な利益を提供しないシロモノに対して好きか嫌いか、そう感じる理由とその真意の在り処を求めているのではないだろうか、とも思う。
今のこの世の中、オタな趣味が好きな自分としては、まぁ、全員が全員、そうなると暑っ苦しいとは思うのだけど、せめて自分が気に入ったものは取り上げていきたいなーとは思ってもみたり。
……とかとか、作品を読みながら別口の感想を書いてしまっているようですが、本当にお勧めです。
未読の方は読んでみないと(このblogまでこられた方ではもういないかもしれませんが)
あー、また茶器とか見に関東方面の美術館めぐりとかしたいな。千利休の黒い茶器。そして、織部が残したあのダイナミックな形の茶器など、見たときの衝撃は中々得がたいものがありましたから。
追記。
作中出てきた黄金の茶室については、熱海のMOA美術館でその精巧な復元を見たときの衝撃を思い出した。いや、確かにNHKの大河ドラマで秀吉の黄金茶室については聞いてはいたが、実際に現物を見るとあまりの衝撃に笑うしかなかったのを思い出したなぁ。
いや、だって、金箔貼り付けた茶室に緋色の毛氈ですよ。初めて見たときの衝撃は「わけわからん、なんだよ、そのやっちゃった感は!」とおもっていましたよ。さすがにまだ「侘び」も「寂び」理解していない自分には、あれを見て華と侘びが同居している…とは思えなかったんですが(苦笑)。
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