最強の狙撃手 | |
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WW2ドイツ軍No2狙撃手ゼップ・アレルベルガーの戦いを追った作品です。
いきなり舞台が1943年の東部戦線という地獄の釜が開いた戦場へ彼が補充兵として送られることから始まります。
機関銃手として過酷な戦場を過ごして負傷した彼は、このままではいずれ死ぬ羽目になることを予感して、鹵獲兵器であるソ連の狙撃銃、モシン・ナガンを手にとったことにより彼の狙撃手としての道が開かれる。彼には狙撃手としての才覚があったのでしょう。
とはいえ戦場は地獄の東部戦線。撤退戦ですので、戦場はどんどん西へ押し返されるわけです。
陣地を掘ってソ連軍を迎え撃ち、幾度か戦い、ソ連の物量に押し捲られて撤退、(運がよければ)補給と補充を受けて再編成して、また陣地を構築してソ連軍と戦って・・・の繰り返し。
そこには過酷な東部戦線の現実が横たわっているわけです。捕虜は取らないし、残さない、陰惨な戦いの連続が・・・。驚くべきなのは、ゼップの戦いに写真が数多く残されていること。
一体全体いつこんな写真取ったのか疑問なんですよね・・・。彼が始めて狙撃手を撃ち倒した(カウンター・スナイプ)ときの相手の写真、ソ連軍に多かった女性狙撃手を倒したときの写真・・・。
無論写真だけじゃなくて、非常なまでに克明に戦場や捕虜虐待の陰惨なシーンが描かれるわけですよ・・・これはえぐい・・・。
もう、いくら東部戦線が陰惨極まる戦場だったという認識があったとはいえ、こうやって連続してみると気が滅入ってきます。なので精神的にくる話でもあるので余力のあるときにどうぞ、としかけません。
大体、WW2初期のドイツ軍が狙撃兵という兵種を廃止していたっていうのも首をかしげる話です。
戦場に狙撃兵がいるというだけでどれだけ相手の動きを拘束できるのか、理解が足りていないというか・・・ドイツ軍も東部戦線のモスクワ近辺までいくところで、ソ連の狙撃兵たちに動きを拘束されて始めて狙撃兵の重要度を知るのですが、遅すぎる・・・。
現場では鹵獲したソ連の狙撃銃を兵士に持たせて即席の狙撃兵に仕立てるわけです。アレルベルガーもその一人ですが、後にドイツ軍では狙撃兵養成部門を立ち上げて対応しますが時すでに遅し。アレルベルガーも一度は養成部門に行き、ドイツ軍の狙撃銃を受け取るのですが、東部戦線は崩壊の一途をたどる・・・というわけで。
この作品の中では、アレルベルガーの卓越した狙撃テクニックなども描かれていますが、ほんと細かいですよ。
狙撃陣地を作り、万が一の場合、退避すべきルートをつく。長時間の待機のために、あれこれ(食事とか排泄とかあるわけです)準備する。至近距離戦闘のために短機関銃を手元におく、いざ捕虜になったときに狙撃兵は虐待されるので狙撃銃は隠せるようにしておく、相手の狙撃兵に対するカウンタースナイピングのために、デコイを準備するなどなど。
骨組みだけの傘を使って偽装したりと、場合によっては観測手を置いたり(一度それで手痛い目にあい、あまり観測手を置かない彼でもその有効さは理解していたようです)ということまでやっている。
狙撃兵という兵種についてあまり一本読んだことが無かったので手にとったのですが、非常に興味深い作品でした。「極大射程」などでスナイパーの小説が好きな人なら手にとってみることをオススメします。
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