地雷撲滅をめざす技術―人道的地雷探知・除去の現状 | |
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地雷。確かに厄介なシロモノです。機能が単純なせいで安価で数が揃えやすく、埋めやすい。維持費もさほどかからない。そのくせ損害を及ぼせる期間は長期間。ちゃんと管理して使う分には、抑止効果が発生するものですが、これがゲリラとか反政府組織までにいきわたる世の中ですから、ロクに埋めたところの管理すら怠っている始末。人々が農作業なども満足行えないので中長期的な経済の打撃は計り知れない。
地雷廃棄を目指したオタワ条約もあまり効果を発揮せず、世界各地に埋められている地雷で今も多くの人々が足などを吹き飛ばされ、体が不自由になるか絶命している。
今も対人地雷が多く埋められているカンボジアでは地雷の撤去作業が行われているが、今のペースでは700年(!)もかかるという始末。火薬の劣化などがあるとはいえ、あと100年あまりは人々は地雷におびえなければならないとのこと。
この本は世界各国の地雷被害をまとめ、実際の地雷撤去の方法をわかりやすく説明しており、今まで地雷に関する自分の曖昧な視点だったのですが、目から鱗でした。
大体、正直言えば自分の地雷撤去のイメージは、92式地雷原処理車か、90式戦車装備のマインプローラ(正式名、92式地雷原処理ローラ)。あとは、海外でよくみる磁力による金属探知機による捜索シーンのあとのナイフをつかっての掘り出し、ぐらいだったのですが、どうも事はそうも簡単にいかないようです。
軍事的地雷原処理は幅4メーター程度のゾーンを80%の確率で安全を確保するものですが、人道的地雷撤去は100%に近い値を出さねばならない。ただし、カンボジアなどの熱帯地方では人一人が平均3メーター四方の土地の安全性を確保するのが精一杯(これは、地形、植生、気温といった自然の要因のほかにも、対人地雷の金属が少なく、金属探知機に感知できない、もしくは感知できるようにレベルを上げると他の鉄くずにも反応してしまう、といったデメリットがあります)。
では、機械で・・・とは思いますが、ここでも地形が邪魔をしますし、運よく出来たとしてもチェーンやローター、ブレードで地面を掘り返すタイプは、地雷を爆破したときの影響で部品を交換しないとならなくてコストがバカにならない。
読めば読むほど気が滅入ってきます。無論、合成開口レーダーや複合センサーの探知機も考慮されていますが、どれもこれもが自然環境に左右されたり、費用対効果であまりに高額だったりします。結局はセンサーである程度あたりをつけたあと、人力で手間隙かけて掘り返すしか方法がない・・・とのこと。
いやぁ、手軽に読めるのは確かだけど、その手軽さ分、問題の奥深さがはっきりとわかります。
どうやれば安価に、手早く、地雷を撤去することが出来るのでしょうか。暗澹としてきますね。というわけで読書メモとして。
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