Landreaall 12 (12) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) | |
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ウルファネア篇終了+アカデミー騎士団?篇。
DXの働きとアカデミーの書簡による援護もあってか、リドと五十四さんは無事アカデミーに戻れることに。望まなない力=出自を用いて事を収めたことを含めて、まだ力が足りないことを自覚したDX。
一方、夏季休暇を祝う催しが行われていたアカデミーは謎の生物による襲撃事件が発生。アカデミーの生徒達が閉じ込められる羽目に。DXがいない中、彼らは?
ってなわけですけどね、いや、ほんと丁寧な作品ですよ。
外交的修辞言語による陰険やり取りでリドの兄をやりこめるアンの顔がまぁ...wといったとちころですが、今回もDXのやんちゃをアンちゃんが上手く帳尻合わせた。という展開でしょうが、何度も物語で描かれているように、DXのその傭兵気質を何よりも買っているのもアンちゃんで、今の気質そのままに逃れられない王位継承権という出自すら使いこなさなくてはならないのだとDXに示唆します。
DXはDXでそんなアンちゃんの思惑も理解しているんですが、今回はそのものずばり、という展開になって、まだまだアカデミーで勉強しないとならない...と思っているのかいないのか。
一方のアカデミー騎士団篇。
ウルファネア篇の導入部でネタだろと思っていた「猫はしか」が最後のキーになっていたように、こちらはウルファネアに向かうDX達が遭遇した謎の生命体がキーとなっているようです。
作者がLandreaallという物語を丁寧に作っているおかげで、アカデミーの内部が王国の縮図となっているのが明確にわかります。昔からの貴族=騎士、新興してきた商家、能力の高さで抜擢された平民。彼らの間にはわだかまりがある。
...貴族は能力の有無に係らず口を出そうとし、新興商家は能力もないクセに反発し、平民は口ではなんのといいつつ見捨てるのは貴族だろ?というわけです。
しかし、とは言っても守らねばならない幼少部の子供たちと女子たちがいる。
ティティをリーダーとして、護衛を騎士候補生のカイル、脱出組のリーダーにハルがついてそれぞれ結束して事に当たります。
物語中、カイルがDXがいてくれたら...と呟きます。たしかに普段、いくら呆けているように見えてもDXならば王位継承候補として制度的な面でも問題なし、実力についても火竜との戦いで有名だし、腕が立つのも知れているので問題なし。(その様子とは違って)思慮深いところがあるのも一部の生徒達は知っている。
とはいえ、DXがいない今、残った生徒の中で最上位のティティがリーダーを務めるしかなく、カイルは激を飛ばして生徒達を纏め上げることになるわけですが、ここの一連のやり取りが面白い。貧民層出ということもあって色々反発を買っているフィルについてティティは無論のこと、カイルであっても彼の能力を正当に評価するわけです。
...まぁ、これは中世から近代になるにつれ国家が体験せねばならない問題ではあるのですが(既得権益の再構成は結構、外乱によって発生するもんです...)、それを次世代の国を担うアカデミーの若い子息達がいきなり体験する羽目になったところを描いてみせているわけですよ。混乱の中から立ち直り変革の時代を向かえつつある王国の子息達が! この作者のことだから、この騒動ですら次の物語の種(伏線)を蒔いていることでしょう。
DXが間に合うことは理屈的に不可能であること(連載中出てきたあの書簡が、ウルファネア篇でのアレだとすれば、同時進行だということがわかります)、いままでどちらかというとDXのみに焦点があたっていた物語が、一気にDX不在という状態で個々の人物に焦点があたるわけです。
どちらかといえば参謀役の役どころであるティティがリーダー足りえるかというのも面白いですし、お気楽な一匹狼を気取っていたフィルもそのままではいられない。それはライナスにもいえるわけです。いままで兄と六甲の庇護の下にいたイオンにも。
今までどちらかというと、DXの周囲を回る星。といった役どころだった面々が、DXがいない状態で組織をつくり困難に立ち向かう、という非常に美味しい物語の展開なわけですよ。
連載中の物語では、ティティに組織のリーダーが下さなければならない決断や、あらん限りの手を尽くそうとするフィル、騎士(貴族)たちの騎士たるが所以を見るライナス、そして恐れを乗り越えようとするイオンの姿も描かれているわけですが、本当に続きが楽しみな作品です。
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