2004年11月14日日曜日

「戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方」松村 劭/ネスコ

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松村 劭
ネスコ (1995/08)
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おすすめ度の平均: 4.25
5 ・・・平成の「諸葛亮」予備軍へ捧げます。
3 思考ゲームとしての戦略
5 無理やりビジネス書として読む


一応、軍事や戦史はビジネス向けに扱われることが多いですね。この本もカバーにそんなことが書いていたりしていますが。著者は元自衛官で陸幕での要職にあった方ですが、この本では実際のシチュエーションを提示して読者に問題を問いかけ、答えを明らかにすることで軍隊における指揮統制や作戦立案などを教えていく・・・というスタイルですけど、まぁ、なんですね。ある程度戦史を読むことで身につくのではないかと思う「原理原則」をちゃんと明示的に説明しているので、「ああ、そういうことね」という納得を得たりすることもできます。
いつの時代でもこの本に書かれている9原則は変わらないと思います。とはいえ、ビジネスにこのまま当てはまるか。というとそうではないのだと思います。結局、戦略・戦術はありとあらゆる常識の積み重ねと組み合わせであり、それは日常の生活でもあまり変化はないのです。革新的な戦術は、その技術を外せば極端なまでに常識的です。電撃戦しかり、エアランド・バトルしかり・・・。
ITによってRMA(軍事革命)を行おうとしている米軍ですが、当初の目論見であったテクノロジーによる兵力の有効活用といった面を無視して、兵力を削減しつつ打撃力増強という誤った見方をしたために、イラクにおける武装勢力の打破に、結局は大兵力、大火力、強装甲(戦車)が必要になったのはある種の皮肉です。ベトナム戦争の失敗もヘリボーンによって兵力を機動的に投入したとしても、地勢を稼いでいるわけではないということで、彼らは二度同じ過ちをしかけていたのですが、なんとか立ち直ったようです(だから自衛隊の削減案に自分は大丈夫か、と思っているのですが)。ゲリラのような兵力を一掃するためには、一箇所に拘束させることが必要なのは言うまでもありません。戦国時代の一向一揆に対する織田家もそうだったはずです。第二次大戦の日本軍(満州軍など)がゲリラ戦などに効力を発揮したのは、徒歩による移動で地勢を占め、行動を狭め、制圧できる箇所まで追い込めたからであり、また決して現地の人々を敵に回したりすることなく水一適たりとて代価を払ったためだ。と、朝鮮戦争で活躍したパク・ソヨップ将軍の自伝にもあります。
まぁ、そのような戦史は人々がいかに常識に囚われ、かつ常識の組み合わせを変えることで革命を起すか、ということもありますが、これはもうビジネスだけではなく生き方そのものにも示唆を与えてくれることだとは思いますね。

ともあれ、安価でこういうベースを教えてくれる本も中々ないと思います。その点では興味深い本でした。後書きにあるように、次は「情報」にフューチャーした本を出版してくれることを望みます。はい。

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