日の名残り | |
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gekka.blogでマサトクさんが取り上げていたので興味をもって購入。ようやく読みました。
時はWW2の終戦から十年あまりがたったころ。英国の斜陽が目に見えて明らかになりつつあるころの話。
戦争前は非公式外交の場となり華やかだったダーリントン・ホールの執事、スティーブンスは敬愛し付き従っていたダーリントン卿を失い、新たなアメリカ出身の主人を向かいいれていた。職業上の危機感から、自らに手紙を出した元同僚のミス・ケントンに会いに行くために、彼は主人の提案に乗り、英国西部への一人旅を始める。
美しき田園風景を眺めつつ旅をつづけながら、思い返すのは華やかなりしダーリントン・ホールの光景と、ダーリントン卿とのやりとり。そして時に協力し、反目していた同僚であるミス・ケントンとの淡い思い出だった――。
なんというかですね、タイトル通り夕暮れ、黄昏どきの話なのですよ。「ああ、どうしてそういう態度とるかな、この人は!」と思うことしきりなんだけど、でもまぁ、それが執事なのだよ。といわれればそれまでの話で。
でもまぁ、プロフェッショナリズム溢れる執事とそれに対する希求はいいんだが、本当にそりゃないだろう。というそっけなさ。実は物語の途中までどっちの方向へ話しが進むかわからなかったのだけれど(いや、本当にスティーブンスのそのバカ正直さに騙された!)、気がついてからは「嗚呼」と落魄することしきり。
もうね、最後のシーンはいろんな意味で泣けてきます。心が泣けた。
丹精な物語でした。うん、執事好きにはたまりませんなぁ。いや、本当に! 読者を選ぶかもしれませんが、眠れぬ夜の御供にどうぞ。淡々と、それでいて哀愁と華やかさを描き、そして自らを再確認していく、そんな物語でした。いい作品読みました、はい。
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