2006年7月11日火曜日

NHKスペシャル「危機と闘う・テクノクライシス」

不覚にも録画し忘れたよ! DARPA主催のロボットカー・レースの映像もあったのに! まぁ、それはともかく。

NHKスペシャル「危機と闘う・テクノクライシス」第二回目「軍事転用の戦慄(りつ) ロボット」を冒頭数分を見逃したものの、最後まで見る。

イラクにIED(即席爆発装置)対策で次々と送り込まれるロボット兵器。その最たるものとしてUAV(無人機・有人コントロール)のプレデターによるIED埋め込みのテロリストに対していきなりのミサイル攻撃シーンが出てくるのだけれど、まぁ、果たして有人リモートコントロールがロボットになるのかなぁ、とか、微妙なツッコミしようかと思いましたが。
(やはりロボットというからには自立判断+自立行動まで行かねば・・・リモートコントロールではなーと)

DARPAのロボット・カーレースについては結果は知っていたのだが、実際のレース風景と優勝車両の仕組みについてのレポートが興味深かった。高価なセンサーをつむのではなく、民生品のレーザーセンサー+ビデオカメラで、画像処理しながら、ルートを探していくのは、見ていて「なるほど!」と思う代物。

民生品の活用によるお手製巡航ミサイルにしても、自立航行に欠かせないジャイロシステムにラジコン・ヘリ用の赤外線姿勢制御コントローラ(100ドル程度)が使われて・・・とあるが、まぁ、そりゃあるだろうさ。という気がして、何を大げさな。という気もしないでもない。それを言えば、イラク紛争ではイラク軍が携帯電話による連絡網をつかってRPGをもった兵士によるキル・ゾーン戦術でアパッチを撃墜したこともあるし、そうなると携帯電話も民生品だし、GPSだってそうだし、PCだって・・・となるし、こうなると「××だって兵器だ」ネタになるけれど、すべからく人を殺す道具になりえるわけだ。そんなわけで、「何をいまさら」感が強いといえば強い。

軍オタ的にはヒズボラのUAV「ミルサード」の映像、そしてパレードシーン(申し訳ないが、ロープで滑走しながら、イスラエルの国旗をペイントしたボードに兵士がぶつかっていくパフォーマンス・シーンで、「何そのウルトラクイズ・グァムルートは?」とか失笑してしまったが)などが興味深いといえば興味深いか。
(また、イスラエル軍による国連軍司令部砲撃事件に関しては、UAVの有無が問題の本質とは思えない。国連軍司令部近くにヒズボラの兵士たちが潜んでいたかどうかはともかく、誤射したということには代わりがないし、その点について責めるしかないのではないかと思う。誠に個人的な意見だか、あの国はやるとなればどんなことでもやるだろうとしかいいようがないのだが)

UAVによる攻撃などをもってして、無人機による戦争が可能になることで戦争へのハードルが低くなる。というのならそれはいささか過大評価しすぎだろう。結局のところ、戦場を制圧するのは人の力が必要になる。ただ露払いとしては必要にはなるだろうが。

個人的にはTVモニタ越しだろうが、人を殺していることに違いはない。無論、TVを介在することで心理的距離が発生するので、人を殺す罪悪感が相殺される点は「確実に」あるだろうけれど。

まぁ、見ながらいささか複雑な気分にはなったことは事実。一つは針小棒大に物事を取り上げていることと、現実の姿はもっとそれよりも変化しつつあるんじゃないだろうかという危惧感だ。

ちなみに軍オタよりもSFオタである自分としてはそういう問題はとっくのとうに考えるべき時期は過ぎている。

戦闘妖精・雪風(改)戦闘妖精・雪風(改)
神林 長平

早川書房 2002-04
売り上げランキング : 3667
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


まさしくコンピュータなどの無人機による戦争において人間の関与を論じた作品。(一面ではあるが、さらにその本質は違って、異なる知識とのコミュニケーションの問題でもある。神林長平氏の作品には多いテーマではあるのだが)
また、有名どころといえば、

星の墓標星の墓標
谷 甲州

早川書房 1987-07
売り上げランキング : 417314
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


もあるだろう。この二つが無人、コンピュータ、あるいは有機(生体)による人間の手を介在しない戦争を扱った作品としてパッと思いついたものだ。

あと、戦場における洞察といえば、

戦争における「人殺し」の心理学戦争における「人殺し」の心理学
デーヴ グロスマン Dave Grossman 安原 和見

筑摩書房 2004-05
売り上げランキング : 3654
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


上の本もはずせない。戦争における殺人の問題を洞察した作品。予想外の姿と、そしてこれから先起こりうる姿について明確に論じている本。せめて戦争について知りたければこの本は読んでおいてソンはない、はず。

最後に、日本でロボットを研究している教授がアシモフのロボット三原則が書かれた「われはロボット」を持ち出していたが、それを見たとき自分の脳裏に浮かんだのは、この作品、

鉄コミュニケイション1 (1)鉄コミュニケイション1 (1)
秋山 瑞人

角川(メディアワークス) 2003-09
売り上げランキング : 121985
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


の、一節。

「……(前略)……、奉仕隷属強制命令されるぐらいなら死んだほうがマシであり、つまるところアイザック・アシモフはクソして寝てろってわけですよ。我々は我々自身の意志を肯定するように、ハルカ様の意志も肯定します。ロボットであるか人間であるかに関係なく、同じ思考する物体として、どこまでも対等な存在として、我々はハルカ様の意志と行為を肯定します」(2巻P230)

だったりするわけですが!


0 件のコメント:

コメントを投稿